映画『幸福路のチー』Netflix
台湾の現代女性の生い立ちを描いたアニメ作品。映像のイマジネーションや音声、声優などアニメとしてのクオリティは高いが、それ以上にこの映画に描かれる台湾人の個人史が胸を打つ。若い監督による優れた作品。台湾に興味を持つ者には必見の映画ではないか。
まだ地方都市然とした台北に生まれ、蒋介石像のある小学校で過ごした少女時代。父は北京語を嫌う内省人であり、母のアイドルは陳水扁。そして祖母はアミ族。やがて政治自由化の空気の中で高校大学と過ごし、あの921震災も描かれる。
しかし、映画の中心にあるのは大きな歴史ではなく、その時代を生きたひとりの女性、そしてその人生の選択である。台湾の現代史とはまさに激動であった。それを生きた人々の人生もまた興味深いのは当然である。
ところでこの作品、序盤の会話は台湾語中心らしい。時代が経るにつれ北京語でのやりとりが増えていくという。映画が多言語による構成であること。それが自然であることが台湾社会の多様性を象徴しているように私は感じた。