『私がホームレスだったころ 台湾のソーシャルワーカーが支える未来への一歩』李玟萱(著), 台湾芒草心慈善協会/企画(編集), 橋本恭子(翻訳)
台湾・台北のホームレス事情を追ったルポ。前半でホームレス10名の人生を描き、後半では彼らを支援するソーシャルワーカー7名の声を聞き取った。
日本のホームレスもそうだが台湾でも事情は同じ。いろいろな人生があり、いろいろなルートをたどって路上にたどり着くのだということが分かる。
輝かしい人生のひと頃があり、誰もがちょっとしたきっかけで躓くものだ。それが分かればあちらとこちらは地続きで他人事とは思えない。
巻末にある「人間看板」「出陣頭」「玉蘭売り」など台湾のホームレスが主に従事する仕事、それから「ホームレスの家」の写真も興味深い。
また、中山徹(大阪府立大学名誉教授)の解説は、彼我のホームレス事情を実際面および制度面から分かりやすく解いておりよかった。
台湾には個人の住所を持たず、困窮して露頭に迷う人をさす言葉がいくつもある。行政および法律の条文では「遊民(ヨウミン)」が一般的だが、NGOでは「街友(チエヨウ)」を使用する傾向があり、一般市民からは「流浪漢(リュウランハン)」「流浪仔(リュウランザイ)」とも呼ばれている。いずれも路上生活者を意味する。