映画『行き止まりの世界に生まれて』

映画『行き止まりの世界に生まれて』

イリノイ州・ロックフォードに生まれた3人のスケボ少年。その過去と現在を追ったドキュメンタリー映画。

そのひとりが本作の監督だからこそ、この希望のない社会でスケボを通じて結びついた少年たちの内面をストレートに聞くことができて、しかも素直な言葉が帰って来たのだろう。

大人がカメラを持ってきてもこんな言葉や表情は捉えられない。そこに本作の価値があるのだと思う。

日本でも最近では自分の家族や兄弟など、密接な関係にカメラを持ち込むドキュメンタリーは多くなった。それは濃密すぎてときに辟易とすることも多いが、見る者に澱のように何かが溜まるのは確かだろう。

これが21世紀のドキュメンタリーの形なのだ。これを見る度に旧世代作家の創り込みが見苦しいものに見えてくる。

一方、カメラの高解像度化がこうした心象的に濃密な映像に向かうとは誰も思っていなかったのではないだろうか。これらは作品と言うよりは心象スケッチあるいは私小説とも呼びたくなるものではある。