『ペイン・キラー/死に至る薬』Netflix
20世紀終わりから今日にかけて米国に死と荒廃をもたらしたオピオイド薬害事件。その事件を当事者双方(製造販売した製薬会社と、中毒によって人生が破綻してしまった市民)から描いたドラマシリーズ。
製薬会社の倫理観の不在、規制当局の機能不全、破滅を促進する保険システムが一方にあり、麻薬には縁のなかった地方都市の中間層・富裕層が医師の処方した薬によって中毒患者となっていく過程が描かれる。
この薬『オキシコンチン』の認可と広告内容の認可の過程には驚くばかりである。私にはこれについての知識がないが、日本では起こり得ないシステムになっているのではないか。そうであってほしい。
真面目な自動車修理工場の経営者が中毒になっていく様子はまさに救いようがない。当事者もその周囲も不幸にするのが麻薬だとは言われるが、彼の場合は信頼していた医師の処方した薬が原因なのだ。
それに対して『オキシコンチン』製造元のパデューファーマ社の経営陣はお気楽な凡人として描かれる。「その機会があってたくさんのお金を稼ぐことの何が良くないのか」という飄々とした表情をしている。
その中でパデュー社の社長であるリチャードは小心者ながら憎めない人物として描かれている。叔父の幽霊と二人三脚で大企業を取り回していく様は軽妙でさえある。演じるマシュー・ブレデリックは良いアクセントになっている。
本作は事実に基づいたフィクションであるが、これだけ有名な事件であればドラマ化は真面目一辺倒という訳にはいかなかったのであろう。
それはそれとして、事件の一応の決着としての裁判の判決と、この広範な事件がまだ継続していることに慄然とした。