『ザ・ファーマシスト: オピオイド危機の真相に迫る』Netflix
全米に悲劇を撒き散らしたオピオイド事件に関するドキュメンタリーシリーズ。『ペインキラー』は事実に基づくドラマだがこちらはドキュメンタリー。
主人公は薬剤師。息子がオキシコンチン中毒になり麻薬ディーラーに銃撃されて死亡。導入はその銃撃事件の真相究明が主要なテーマである。
その後彼はこの事件の背景に広範な薬害事件があることに気づき、そしてそれに取り憑かれるようになる。
やがて自分の住むニューオリンズ地域で無差別に処方箋を配布する医師がいることに気づき、そして、彼は一人の薬剤師としてその医師を告発する活動にのめり込んでいくというドキュメンタリー。
その麻薬中毒者を蔓延させ拡張していくシステムに慄然とする。中毒者はオクシコンチン欲しさに処方箋を出してくれる医師を探し、処方箋を持って薬局に行く。なので処方箋そのものが中毒者にとっては価値のあるものとなり取引の対象にもなり略奪の対象にもなる。。
処方箋を気軽に出してくれる医師は彼らにとって貴重。一方、モラルのない医師にとってもオクシコンチンの大量処方は手っ取り早く患者を集める手法でもある。
さらに製薬会社の販売員が医師にオクシコンチンを処方するための動機を提供し、麻薬を処方することへの歯止めを営業トークによって排除していく。
そもそもその中毒者は本来普通の市民であって、信頼していた医師が痛み止めとして処方した薬によって麻薬中毒となってしまった例が多いことも忘れてはならない。
それにしても米国人の薬剤使用へのハードルの低さや、依頼心の強さは不思議に思えるほどだ。
富裕層の高校生ではバッグに入った錠剤を回し飲みするパーティが一般的であり、そこでためらうことは「男らしくない」「勇気がない」と思われることになるらしい。
米国の若者における薬品への嗜好性というのも興味深い社会的テーマではないか。