『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド

『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド

19世紀初頭、奴隷制度下のアメリカで奴隷である少女コーラの過酷な逃避行を描いた小説。現代のアメリカ文学である。

奴隷であることについては大量の映画、ドラマ、ルポ、ドキュメンタリーがあるが、小説は一体化、没頭感という強みがある。

奴隷として生まれたこと、自由な身分から奴隷になること、そしてそこから逃走するということ。小説を読むという行為はそれを精神的に体験することでもある。この小説はそうして体験するべきものである。

「地下鉄道」という組織や制度のことを地下を走る実際の鉄道路に見立てては小説の組み立てとして秀逸。

それにしてもあまりにも悲惨な黒人奴隷の時代を描くと、どうしても語り口が神話的雰囲気を帯びてしまう。それは現代の作家の性なのだろうか。