映画『ブエノスアイレス』

映画『ブエノスアイレス』

レスリー・チャン没後20年特集のもう一本。こちらはウォン・カーウァイ監督で香港映画の佳作。ネットでも観られるが劇場で見るという満足感。

アルゼンチンに流れ着いた香港のゲイカップル。金がなくなってから仲違いと、それからよりを戻し、また別れというよくあるストーリー。しかし、この密度の高い、臭気が漂う映像の作り込みはどうだ。

タイルの剥がれた廊下と共同炊事場のアパート。冷たい雨の降る石造りの市街。夏の暑さにうだる屋上。レスリー・チャンのただれた男娼の様子、トニー・レオンのドアマンのスーツ姿。そして牯嶺街少年殺人事件のチャン・チェン。

映像に見どころが多くて、ストーリーを追いかけることなくうっとりと映像に浸れる。この映画の鑑賞はそれでいいのだろうと思う。

どうして90年代の香港映画はこんなに自由に、勝手に映画づくりができたのだろうというのがあらためての疑問。そして結果的に多くの名作が残っている。