『僕は八路軍の少年兵だった』山口盈文

『僕は八路軍の少年兵だった』山口盈文

名著の声が高く一読してそれは間違いではなかったことが分かった。彼の体験は同世代によっては珍しいことでもないのだろうが、こうして本になることは稀有である。

特に中共軍兵士であり共産党員でもあった日本人から見た中国内戦と朝鮮戦争の報告は他に例がないのではないか。

それにしても開拓団あるいは日本軍の最下層兵士であることの苦しさ息苦しさ。「内務班」という言葉を思い出す。

それと対象的な中共軍の明確な軍規が極めて印象的である。

ルール(三大規律八項注意)さえ守れば上下関係はゆるく、脱走も可能だったという八路軍。鉄の軍規で締め上げたはずの日本軍・関東軍が民間人を残して潰走し、多くの兵士をシベリアに抑留させたのとは対象的である。

本書には日本軍のその残酷な上下関係は捕虜収容所であっても維持されたという記述がある。これを読むとそれは規律の問題ではなくそれを自ら受け入れた日本人であることから滲み出してくることのように思える。

「日本軍は強かった」と語る夢見る者たちはこの事実をどのように心で整理しているのだろうかと思う。