映画『福田村事件』
江古田映画祭で観た。脚本家のトーク付きだった。森達也の最大の失敗はこの脚本家と組んだことではなかろうか。
映画は、関東大震災直後、朝鮮人と間違われた四国の行商団が千葉県福田村で虐殺された事件を描いたもの。当時の朝鮮人と部落民という多層的な差別と流言飛語に熱狂する国民性の恐ろしさがテーマか。
しかし、日本映画にどっぷり浸かった佐伯、井上、荒井の脚本からは旧来の日本時代劇以外の何物も期待できない。劇映画となれば時代背景を人間関係で描く以外にできないのだろう。
結果、この事件にも差別にも時代にも焦点の合わない作品となった。ただ、強者の役者がやりたい演技をしただけの映画である。
なぜ、森達也はこの素材をドキュメンタリーにしなかったのだろう。今からでも作ってほしい。
あるいはこれだけの名優を使うんだったら『理由』(大林宣彦監督)みたいな映画になるのではと夢想した。登場人物が次々と「あること」について語って、でもそれぞれがバラバラなこと言っていて、やがて真実が浮かび上がるみたいな。