『台湾の歴史』若林正丈
台湾の近現代史に焦点を絞り、時系列に重大事件とキーパーソンを配置して歴史解説書としては申し分ない良書。
特に民主化のプロセスでは米国と対岸の影響、国民党と民主化勢力の動向がきっちりとピースが嵌まるような解説であり、「そうだったのか」とモヤモヤが晴れるような感覚を覚えた。
そして、世界中にあまたある圧政と非民主的な国々の中で、どうして台湾が成功したのか、その答えを得たような気がする。
つまり当時の波乱の高まる海峡情勢において、透明な民主主義を要求する米国に当時の一党独裁政党(国民党)が応えざるを得なかったし、それの受け皿となる民主化勢力が存在したこと。それぞれの動きが現代史の最も良いタイミングで合致したということではなかろうか。
また、そうした民主化へのプロセスにおいて国民の「台湾大」意識が広がっていく様子が重ね合わせて見える。
それにしても本書にある通り、国民党支配から民主化への間において、李登輝という優秀な指導者がいたことが台湾の歴史にとって極めて幸運であった。まさに内外入り組んだ情勢を適切に舵取りし、優れた国の形を作り上げた建国の功労者であろう。
また、補説において台湾の総統選挙について制度の変遷や票の変遷について詳細に解説されるのも読み物である。
本書は台湾の近代史および現代史の入門書としては「台湾のアイデンティティ」と並んで必読である。