「国家人権博物館」@台北

「国家人権博物館 白色テロ景美記念園区」@台北

今回の台湾旅行の目玉の一つとして国家人権博物館に行ってきた。ちょうどその2週間後である今日、立法府での野党の動きに反発して青鳥行動が台湾各地で起きている。旅行中の静かだった台北の街は嵐の前の静けさだったのか。

「国家人権博物館 白色テロ景美記念園区」は台北市内にあり、MRT大坪林駅からバスで15分ほどのところにある。今でこそ台北のどこにでもある市内の風景に飲み込まれているが、おそらく当時は殺風景な地域だったのだろう。

その殺風景な場所に政治犯専門の収容所があった。国家人権博物館は当時の政府の蛮行と市民の苦しみを記録し記憶を伝えるため、その収容所の土地と建物をそのまま保全した施設である。

緑の豊かな敷地に建物が点在しており、のどかな雰囲気さえ漂うがそこにあるのは、無実の市民を裁いた軍事法廷や劣悪な環境で無実の政治犯を拘留した監獄である。

また、旧兵舎では228事件を始め、美麗島事件や白色テロ時代の市民の苦しみをテーマとした特設展示がある。展示は基本的に中国語なのでほとんど理解できなかったがモノと映像と音声で迫力が伝わってくる。義人(ボランティア)らしき説明員も熱心に説明してくれた。

拘留エリアでは実際に政治犯が収容された監房やその他の施設をすべて歩いてみることができる。監房の中に入ることもできる。

このエリアには中庭があり、おそらく収監者がひととき外気と散歩を楽しんだものと思われる。私が行ったときは雨が降っていて収容者の絶望と悲嘆がひときわ感じられた。彼らも高い壁に囲まれた狭い空を見上げたのだろう。

いちばん印象に残ったのは正門近くにある人権記念碑だった。ここにはこの施設に収容されたすべての政治犯がパネルとして設置されており、それぞれに名前、収容期間、そして死刑となった者はその執行日が刻印されている。そして、それらが低い壁に年代別にはめこまれている。最も最近では1990年のパネルがあった。

それを見ながら歩いていると、政治的迫害とはまとめた人数や記録ではなく個々人の苦しみのことなのだということが体感できる。

グラフィックノベル「台湾の少年」にあったように、当局による取り締まりの実績作りのために、憲兵が無実の人間を政治犯に仕立てることがあった。そして離島に収監され、塗炭の苦しみを味わわされるということがあった。そうした体験を持つ人がこれだけたくさんいたことを実感させるものだった。

台湾の魅力はいろいろあるが、国際社会に翻弄された複雑な近現代史を経て今日の台湾社会がある。そのあり方を、ここに暮らす人々を通じて感じることもそのひとつではないかと思う。その意味で国家人権博物館は、台湾を何度目かに訪れる者には必須のスポットではないかと思う。

台湾人による国家人権博物館の案内動画があったので紹介する。

https://www.nhrm.gov.tw/w/nhrm/Index