書籍一覧

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『認知症の私から見える社会』丹野智文

『認知症の私から見える社会』丹野智文 筆者は29歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された当事者。現在も自動車販売会社で事務職のポジションで勤務している。 本書で繰り返し伝えようとしているのは、認知症当事者に決めさせろということ。 いわく、認知症と診断されたとたんに財布も自動車も取り上げられ家族が保護する対象になってしまう。しかし、当事者は昨日までと違う人間ではなく自分の人生を自分で決めていきたい...

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『誤作動する脳』樋口直美

『誤作動する脳』樋口直美 筆者は40代でうつ病と診断されるが50歳になってレビー小体型認知症と診断される。それ以降、症状と不安とをなだめすかしながら共存している。本書は認知症当事者としてこの世界をどう見ており、どう生きているのかという貴重なレポートである。 異音、幻視、記憶喪失、時間感覚異常、匂い・味覚の喪失など認知症の症状はいろいろあるが、本書では当事者としてどんなときにあるのか、どのように見えるのかを...

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『認知症世界の歩き方』筧裕介

『認知症世界の歩き方』筧裕介 認知症の人はこんな事をするとか、こんな事を言うとかの本は沢山ある。しかし、この本は認知症の人には世界がこう見える、と教えてくれる。 「こんなことがありました」「気持ち悪いのでこのようにして過ごしております」など当事者への取材に基づいたモノローグを多用し、認知症の方がこの世界を旅する様子を伝えてくれる。 お風呂に入りたがらない。同じ服を着るようになった。それは当人にとって...

『筆録 日常対話 私と同性を愛する母と』ホアン・フイチェン

『筆録 日常対話 私と同性を愛する母と』ホアン・フイチェン 先日見たドキュメンタリー映画の監督による同名のエッセイ集。 台湾の貧しい地方で育ち、早くして結婚した母は夫からの暴力に苦しむことになった。そして幼い娘たちを連れての逃避行。 その母はレズビアンであり次々とパートナーを変えた。一方、父は娘である私(著者)には暴力と執拗な執着だけを記憶に残している。 また、本書では、妹について、家について...

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『私がホームレスだったころ 台湾のソーシャルワーカーが支える未来への一歩』李玟萱(著), 台湾芒草心慈善協会/企画(編集), 橋本恭子(翻訳)

『私がホームレスだったころ 台湾のソーシャルワーカーが支える未来への一歩』李玟萱(著), 台湾芒草心慈善協会/企画(編集), 橋本恭子(翻訳) 台湾・台北のホームレス事情を追ったルポ。前半でホームレス10名の人生を描き、後半では彼らを支援するソーシャルワーカー7名の声を聞き取った。 日本のホームレスもそうだが台湾でも事情は同じ。いろいろな人生があり、いろいろなルートをたどって路上にたどり着くのだということ...

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『日本の包茎 ――男の体の200年史』澁谷知美

『日本の包茎 ――男の体の200年史』澁谷知美 歴史社会学者・ジェンダー論研究者による日本男性の包茎に関する感覚についての論文。 医学的には決して異常ではなく、病気でもなく治療も必要としない仮性包茎。これは実際にも多数派である。それを「恥」とする感覚は日本男性特有のものであり中国にも西欧にもない。にも関わらず多くの男性がこれを隠し、方法があれば治療したいと考えているのはなぜなのか。 澁谷によ...

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『ウィーン近郊』黒川創

『ウィーン近郊』黒川創 ウィーンで25年間暮らした兄が自殺した。今は京都に住むその妹がその後の手配のために現地へ飛ぶ。彼女は養子縁組から間もない乳児を連れての旅である。そこで領事官や職場、教会など兄の知人などの手助けを得てつつがなく手配を済ませて帰国するというストーリーである。 あまりない経験であろうが今日では珍しいことではない。そして心象風景も大きな起伏がなくたんたんと綴られる。きわめてパーソナルな感情...

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『武器としての「資本論」』白井聡

武器としての「資本論」 白井 聡 マルクスの資本論の体系的解説書ではなく、同書を素材とした新自由主義打倒への指南書。 「20世紀中庸にあったフォーディズムなどは決して労働者保護政策ではなく、あくまでも国内に消費者育成が必要であったという資本家側の都合によるものである」など興味深い指摘がある。 また、「資本主義的成長終焉の本来の原因は国内に安価な労働力が枯渇したからに過ぎない。低賃金の労働者を求めて海...

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『枝野ビジョン 支え合う日本』枝野幸男

『枝野ビジョン 支え合う日本』枝野幸男 立憲民主党党首の政策表明。「党の綱領とは違う」とはしながらも政策の方向性はこれに沿って策定されることは間違いない。 枝野の政治観は「保守・リベラル」。それは安倍以前の自民党政治と親和性が高い。そして枝野の保守とは、近代以降のわずか150年間ではなく1500年に及ぶ日本の歴史を尊重するものである。一方、現在の自民党が謳う保守はこの近視眼の方であることは言うまでもない。...

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「白魔―アーサー・マッケン作品集成〈1〉」アーサー・マッケン

「白魔―アーサー・マッケン作品集成〈1〉」アーサー・マッケン 有名な「パンの大神」を読んでないと思いだして読んでみた。高橋洋の映画「恐怖」はこの小説にインスパイアされたとのことで、確かにモチーフをなぞっている。 脳のある機能を刺激すると本来見えるはずのない物事が見えるようになり、それでその処置をされた女が正気を失っていき、やがて何か邪悪なものを産み落とすという。 それはそれで面白かったのだが、この1...

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「台湾、あるいは孤立無援の島の思想」呉叡人

「台湾、あるいは孤立無援の島の思想」呉叡人 台湾人の研究者による台湾に関しての歴史および国際政治評論集。しかし、評論だけではなく詩的な表現や書簡形式、エッセイ風もありと多様な表現形式である。 台湾社会が、自国についてはもちろん、世界政治を、歴史を、日本を、東アジアをどうみているのかが分かる。 台湾をめぐる各国のせめぎあいが微に入り細に入り記述されるのでそれだけでも興味深いのだが、何よりも彼にとっての...

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「82年生まれ、キム・ジヨン」チョ・ナムジュ

「82年生まれ、キム・ジヨン」チョ・ナムジュ 現代に生きる韓国の女性の生きづらさを綴った小説。韓国社会の状況を知る上で興味深い。 制度的には恵まれているように見える韓国の現代女性だが、実際は各世代の男女の考え方などに残る男性中心主義に悩むことが多いとのことだ。 この小説でも主人公のキムには理解のある夫と幼い子どもがいるが、いつしか精神を病み、回復については最後まで明らかでない。 そういう物語だ...

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「日本の教育はダメじゃない ―国際比較データで問いなおす」小松光・ジェルミー・ラプリー

「日本の教育はダメじゃない ―国際比較データで問いなおす」小松光・ジェルミー・ラプリー 本書はピザ、ティムズ、ピアックなど国際的な調査に基づいた日本の教育への提言である。「だから日本はダメだ」との見方にも、「だから日本はスゴイ」との主張にも与することなく、あくまでも科学的視点の提案に徹底している良書。 本書では巷間に流布する日本の公教育に関する悲観論をデータに基づいた国際比較からひとつひとつ否定していく。...

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「サハリン島」エドゥアルド・ヴェルキン

「サハリン島」エドゥアルド・ヴェルキン 核兵器と生物兵器によって破滅した世界で、日本だけは唯一の文明国として生き残っている時代。日本が接収した国境の地であり監獄の地でもあるサハリン島を未来学者の美少女とその護衛が旅するというポスト・アポカリプスSF。 ロシア人作家が日本社会を舞台にサハリン島を舞台にしたというだけが目新しい平凡なSF小説だった。 マッキントッシュのコートの下に二丁拳銃を隠し持つロシア...

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「ブルシット・ジョブ―クソどうでもいい仕事の理論」デヴィッド・グレーバー

「ブルシット・ジョブ―クソどうでもいい仕事の理論」デヴィッド・グレーバー 単なる個人の社会観の表明でエッセイに過ぎない。それにムダに長くて惹かれるところがない。このテーマならもっと面白く語るエッセイストやコラムニストはたくさんいるだろう。 これだけ路上で冷たくなっていく人々や現場に多忙死があふれる世の中で、この人には居心地のいいオフィスにいてヒマで死にそうな人々しか視野に入っていないのかと思うと戦慄する。...

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『ふだん使いの言語学ー「ことばの基礎力」を鍛えるヒント』川添愛

『ふだん使いの言語学ー「ことばの基礎力」を鍛えるヒント』川添愛 言語学、情報学の研究者による日本語の使い方指南。特に興味をひかれる内容ではなかった。良い日本語は論文、記事、小説、SNSなど多様なものを多く読み、多く話し、書くことによって自然と身につくものではないのか。 本書でいちばん納得したことは、言語学は言語のエキスパートではなく、正しい言葉遣いの専門家でもないということ。「自然現象としての言葉の仕組み...

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「英語独習法」今井むつみ

「英語独習法」今井むつみ 認知科学、言語心理学、発達心理学を専攻する研究者による実践的英語学習法。世の中によくあるノウハウ集や学習参考書とは違って人間の言語認知のしくみから効果的な第二言語の習得を提案する。 基本的な考え方は日本語と英語の「スキーマ」の違いを理解すること。そのためにコーパスや各種ツールを使ってひとつの言葉がどのような文脈で多く使われているのか、言い換えるとしたらどのような単語や熟語があるの...

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「ディアスポラ」グレッグ・イーガン

「ディアスポラ」グレッグ・イーガン ハードSFが行き着くとこまで行ってしまった作品。情報としてネット上に存在する人類が宇宙創造の鍵となる存在を探して多元宇宙を旅するというストーリー。 もう、普通の人間は出てこない。生身の人間もDNA操作で現代人とは違うし、主要な登場人物は情報としての存在なので生き方も考え方も違う。彼らは通常は実時間の何倍ものスピードで生きており、必要な時のみ低速化して実時間を生きる。 ...

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「万物理論」グレッグ・イーガン

「万物理論」グレッグ・イーガン 2055年の近未来。宇宙のすべてを説明するという万物理論が3つの候補に絞り込まれた。 科学ジャーナリストのアンドルーは、そのうちひとつの理論の提唱者であるヴァイオレットを取材するため太平洋上に浮かぶ独立国家「ステートレス」に乗り込むが、そこである科学カルトの暗闘に巻き込まれるというストーリー。 しかし、物語はそれだけにとどまらず、彼は「ステートレス」消滅を目論むバイオ...

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「順列都市」グレッグ イーガン

「順列都市」グレッグ イーガン 小説としてはちっとも良くないのだが、そのセンスオブワンダーは手の届かない高みにいるよう。読んでいて目眩がした。90年代ハードSFの真価を伝える傑作。 人間の肉体と精神がコピーされてサーバー内に存在できるようになった世界。そこまでならよくある設定であるが、この世界ではそのサーバー性能が入札によって変動する。 裕福なものは自前のスーパーコンピュータで現実の世界とリアルタイ...