映画「ジェニーの記憶」

映画「ジェニーの記憶」 ドキュメンタリー作家として成功した女性が48歳になって13歳のときのセックス経験を思い出すというストーリー。相手は40歳。それは恋愛だったのか虐待だったのか。 母に指摘され、当時の知人に話を聞くまでは記憶から拭い去られていた出来事。それを思い出し、当時の自分の姿と相手の男性を映像として描くとそれは明らかに…。それでも当時の「私」にとってはそれは自分の選択。そして自分が主体的に終わら...

映画「もう終わりにしよう。」

映画「もう終わりにしよう。」 NETFLIXでご紹介されて見てみた。付き合い始めて間もないカップルが彼の実家に行くことになり、その車内での会話から始まる不条理劇。 語り手が彼女なので、その彼女が主人公なのかと思いきや、彼女は本当は彼の空想の存在かもしれない、いや彼自身も年老いた掃除夫の空想の存在なのかも。と見るものの意識を二転三転させる、そうしたメタドラマを楽しむ映画。 エンドロールにも彼女は「yo...

NO IMAGE

『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』ルシア・ベルリン

『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』ルシア・ベルリン ルシアは1936年生まれ2004年死去の20センチュリーウーマン。 少女時代はアラスカや米中西部で貧しい生活を送り、女学生時代は脊柱障害でギブス装着の毎日を余儀なくされる。その後一転して南米チリでの豪奢な生活をおくる。 しかし、帰国後2回結婚し、2度めの夫と離婚してからはシングルマザーとして4人の子どもを育てることに。その間、家政婦...

NO IMAGE

「死ぬ時はひとりぼっち」レイ・ブラッドベリ

「死ぬ時はひとりぼっち」レイ・ブラッドベリ ブラッドベリの1985年の長編。主人公は売れない小説家。雨の夜、ヴェニスビーチ行きの路面電車で後ろに座った男に「死ぬときはひとりぼっち("Death is a lonely business.")」と囁かれるところから始まる探偵小説。 それだけでファンならぞくぞくするのだが、期待を裏切らないノスタルジーと夜のイメージの奔流に心地よく流されていく小説体験。 ...

映画『ハーヴェイ・ミルク』

映画『ハーヴェイ・ミルク』 米国でホモセクシュアルとして初めて選挙に選ばれて公職を得たハーヴェイ・ミルクのドキュメンタリー。1984年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門受賞作品。 サンフランシスコのゲイムーブメント興隆と、市長が多様性社会に理解があったこともあり、ハーベイはホモセクシュアルの教師を追放するべきとした第6条破棄の住民投票に勝利するなど多くのゲイ運動の成果を勝ち取っていく。 しかし、同じ...

映画『ゼロ・ダーク・サーティ』

映画『ゼロ・ダーク・サーティ』 CIAの女性調査員がビンラディンを発見して殺害するまでを描いたインテリジェンスサスペンス映画。 自分の人間性とか人生の喜びを犠牲にしてテロのリーダーを追い詰める様はもはや狂気を感じさせるが、これが911以降の米国の空気なのだろうか。 サスペンスとしては面白いのだろうが「事実に基づく」物語としたら暗澹たる想いとなるのが普通の人間だろう。 これをただの面白い映画と消...

NO IMAGE

「専門知は、もういらないのか」トム・ニコルズ

「専門知は、もういらないのか」トム・ニコルズ 国際政治を専門とする米国の大学教授による現代メディア論。インターネット、Google、ケーブルテレビの台頭、知性を敵視する大衆、その結果としてのトランプ大統領などタイトルから想定できる範囲を十分カバーしている。 特に興味深かったのが米国の大学事情についての章「高等教育―お客さまは神さま」。現役の教育者としての著者からの米国大学レポートである。 日本もそう...

NO IMAGE

「タイム・シップ」スティーヴン・バクスター

「タイム・シップ」スティーヴン・バクスター H.G.ウェルズの古典「タイムマシン」の続編として書かれたもの。19世紀末の現在に帰ってきた主人公が翌日ウィーナのいる未来に還ったところ、そこは改変された未来だったという出だし。 リングワールド的な惑星土木工学、それからスチームパンク的な20世紀の戦争期、さらに太古の世界でサバイバルと人類種の始原。その後、量子論的宇宙観からサイバーパンクを経て宇宙の始まりへ遡る...

NO IMAGE

「トリフィド時代 (食人植物の恐怖)」ジョン・ウィンダム

「トリフィド時代 (食人植物の恐怖)」ジョン・ウィンダム 1950年代のSFで誰もが知っている傑作。ある夜、世界中を覆った流星群を見た人々は視力を失った。同時に可動能力のある食肉植物トリフィドが蔓延し、視力を失った人々を襲い始める。というポスト・アポカリプスとサバイバルのジャンルの魁となる小説。 「トリフィドの日」という映画にもなったが、原作はそちらとは違って生き残った人々(晴眼者も失明者も)がどのように...

映画「COME AND SEE(邦題:炎628)」

映画「COME AND SEE(邦題:炎628)」 1985年公開、ソ連制作の戦争映画。ナチスドイツ侵攻時のベラルーシ民間人への虐殺を描いた作品。監督のエレム・クリモフはこれ以後、映画を撮っていないという。 パルチザンに参加を試みた少年兵と森で出会った少女。家族のいる村での虐殺などを経て別の村で保護されることになるが、そこではさらに残虐な体験をすることになるというストーリー。邦題はその時期に住民とともに焼...

NO IMAGE

「戦争は女の顔をしていない」スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ

「戦争は女の顔をしていない」スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 大祖国戦争(第二次大戦におけるソ連とドイツの戦争)では100万人以上の女性兵士が従軍して闘ったという。アレクシエーヴィッチは1978年から2004年にかけてこれら元女性兵士等の500人から話を聞き、約200件の聞き書きをこの本に収めた。 この本以前には社会として明らかにしたがらず、また本人らとしても自ら語ることがなかったが、その体験は驚嘆すべ...

NO IMAGE

「巨神計画」「巨神降臨」「巨神覚醒」シルヴァン・ヌーヴェル

「巨神計画」「巨神降臨」「巨神覚醒」シルヴァン・ヌーヴェル 太古に埋められた巨大ロボット。ようやくこれが制御可能になったとき、突然現れる新たなロボット群と激しい戦闘になる。ようやく異星人のロボットを撃退したとき、地球人のパイロットはロボットごと異世界へ運ばれることに。というのがこの3部作のあらすじ。 あらすじから想像するほどアニメとか映画っぽいストーリーではない。レポートの往復書簡形式なので緊迫感が持てな...

映画『島にて』

映画『島にて』 自粛期間が明けて今日から映画館の再開。早速ポレポレ東中野で見てきた。会場は2席離して利用可なので経営的には辛いだろうなと思ったが、久しぶりの劇場で良質なドキュメンタリーを堪能。 舞台の飛島は、山形県酒田市から高速フェリーで75分の離島。産業は漁業中心で人口は140人ほど。一時期1,200人を超えていたのですっかり寂しくなった。小中学校は建物は立派だが生徒は中3がひとり。彼が卒業すると学校は...

映画『冬冬の夏休み』

映画『冬冬の夏休み』 これも侯孝賢の1984年の作品。 母親の入院で田舎の祖父の家で夏休みを過ごすことになった小学生の冬冬(トントン)と妹の婷婷(ティンティン)。地元の子どもたちや大人たちとの出会いを描いた佳作。 20年前初めて観たとき都会の子が地元の子どもたちに受け入れられるのに驚いた。日本の映画だとこんなときはいじめられるものと決まっているのに。風景や日常も日本と同じようであり微妙に違うのだけど...

NO IMAGE

映画『戀戀風塵』

映画『戀戀風塵』 侯孝賢の1981年の作品。オープニングで十份の駅が見えたときからなぜか懐かしくなる。別の国なのに。 山村から都会に出できた男の子と女の子の出会いと別れという素朴なストーリー。村の広場で映画会。不器用で危うい都会の暮らし。そして兵役。昭和の日本でもこんな話たくさんあったけど微妙に違っているのが日本人にとっての台湾映画の魅力。 主人公のおじいちゃん役は戯夢人生のあの李天祿(リー・ティエ...

NO IMAGE

映画『悲情城市』

映画『悲情城市』 侯孝賢監督の1989年の作品。ヴェネツィア映画祭金獅子賞を受賞。 牯嶺街少年殺人事件もそうだったけど、こんな映画が台湾で作れるのかと世界中が驚いたのではないか。私もびっくりした。 カメラが低めに固定されており、その枠を人が出たり入ったり。そのカメラも扉や壁で両側面が制限されていることがある。また、映像外の声で延々と会話が続いたりする。 長回しのカットが多くそれがストーリーをす...

NO IMAGE

映画『インターステラー』

映画『インターステラー』 ワームホール、ブラックホール、高重力下での時間、事象地平など宇宙科学注目のアイテムをきちんとビジュアル化。また、きちんと人工重力のある場所とそうでないところを描いていてこれも好印象。そこがクローバーフィールド・パラドックスとの大きな違い。あちらではいつも地面に脚がついていた。 しかし、インターステラーでも地球の重力圏を脱出するのにロケットを使用したのに、水の惑星や氷の惑星の地表を...

NO IMAGE

映画『ママ、ごはんまだ?』

映画『ママ、ごはんまだ?』 台湾名家の父と日本人の母、そして一青姉妹は姉の妙が幼少のうちに日本へ引っ越しした。この映画は、その姉が父の人生、母の人生を追って人と出会い、これまで気づかなかった人生の事実に出会うというはなし。 昭和の日本、揺れる台湾社会、そして女手ひとつで娘たちを育てることになった母の人生。それは平凡なものではあるがその人生の機微こそが尊いものであるとこの映画は認識させてくれる。 思え...

NO IMAGE

映画『牯嶺街少年殺人事件』

映画『牯嶺街少年殺人事件』 80・90年代の台湾映画界はめくるめくばかりの傑作ラッシュ。この映画はそのうちのひとつ。エドワード・ヤン監督が4時間近い作品をよくつくったと感銘を受けたことを思い出した。現在NETFLIXでこの長い版が見られるので数十年ぶりに見てみた。 別に難解な映画ではない。多感な年齢の少年少女が社会に翻弄されながら関係をこじらせていくというだけのストーリー。しかし、60年代の台湾社会背景を...

NO IMAGE

映画『ブラック・クランズマン』

映画『ブラック・クランズマン』 黒人がKKKに潜入捜査?スパイク・リー監督の緊張感たっぷりで痛快な潜入捜査モノ映画。誰もが楽しめる映画に仕上がった。ブラックは美しく演説も所作もなめらかで美しい。それに比べてKKKの白人は知的に低級に描かれるのは仕方ないか。エンディングが現代の状況につながっていくところがスパイク・リーの本領発揮。白人か白人みたいな有色人種しか出てこない映画に食傷したらこちらでデトックスするといい...