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「民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代」藤野裕子

「民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代」藤野裕子 江戸期以降の民衆による暴力行為をテーマとしたエッセイ。対象の選択が恣意的なので研究論文とは言い難い。なのでエッセイとした。 取り上げるのは江戸期の「世直し一揆」、明治に入ってからの「新政府反対一揆」、同じく「秩父事件」、明治時代後期の「日比谷焼き討ち事件」、それから大正時代終了間際の「関東大震災時の朝鮮人虐殺」。 日本の中世、近代史の民衆による暴力行...

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『パワー』ナオミ・オルダーマン

『パワー』ナオミ・オルダーマン 突然すべての女性の肉体に備わった電撃能力により男女の立場が逆転する世界を描いた小説。 科学の裏付けを顧みない姿勢、架空の歴史資料・遺跡・遺物を提示していることから、これはSFとは言い難い。また、こうした条件によって社会がどうなるのかという分析があるわけではないので社会シミュレーション小説とも言い難い。 しかし、現状の男性社会へのほぼ憎悪とも言える厳しい姿勢は一読に値す...

『メイドの手帖』ステファニー・ランド

『メイドの手帖』ステファニー・ランド 副題にある通り、「最低賃金でトイレを掃除し『書くこと』で自らを救ったシングルマザーの物語(エッセイ)」。 ルシアン・ベルリンの『掃除婦のための手引き書』 は20センチュリー・ウーマンの物語だったが、こちらは21世紀、ゼロ年代以降の米国人女性の過酷な人生が綴られている。 ステファニーは20代で予想外の妊娠、交際中の相手によるDVを経てシングルマザーとして自活を余儀...

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性差(ジェンダー)の日本史@国立歴史民俗博物館

性差(ジェンダー)の日本史@国立歴史民俗博物館 古代、中世、近代の歴史展示からジェンダーを語るという展示会。 鎌倉時代の仏像から往生を願っての紙片や毛髪が大量に発見されたものが興味深かった。紙片にはそれぞれ氏名が書かれており、女性の名前も大量にあったという。法然と遊女の逸話から当時の仏教においては女性は往生できないものとされていたと考えていたのだが、そうではないらしい。 また、近世における髪結いとい...

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『もう一つ上の日本史『日本国紀』読書ノート 古代~近世篇・近代~現代篇』浮世博史

『もう一つ上の日本史『日本国紀』読書ノート 古代~近世篇・近代~現代篇』浮世博史 質のわるいベストセラーにあやかって正しい歴史を伝えようとするところは「間違いだらけの少年H 銃後生活史の研究と手引」と同じやり方。これもあの本が売れれば売れるほどその数パーセントが正しい歴史認識に目覚めるわけで、その受け皿としてこうした本が出るのは悪い話ではない。 著者は現役の歴史教師。それでこの本のベースとするのはもちろん...

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映画『パラサイト 半地下の家族』

映画『パラサイト 半地下の家族』 カンヌでパルムドールだというので見てみた。貧乏家族が金持ち家族を欺いて家庭教師、運転手、家政婦として入り込んだが、その家の地下には先客がいたというストーリー。 劇映画として凝ったつくりで面白いがそれだけ。特に格差社会に問題意識を持っての映画ではない。そうであるならばもっと良い映画はたくさんある。 そもそも階級格差とその衝突は、過去と現在の映画の主要ジャンルである。深...

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『富士日記』武田百合子

『富士日記』武田百合子 もう40年前になるが、私の父は風流な人で毎年8月になると猛暑の東京を逃れて精進湖で過ごすことにしていた。当然、その家族、母、私(小学生)、妹(小学生と幼稚園児)もそこで過ごすことになる。 釣りが好きで何度も訪れていた精進湖で知り合った地元の方から、空いてた古民家を毎年一ヶ月だけ借りたのだ。 精進湖はとにかく涼しいところで夜は布団をかけて寝ていたくらい。当時はテレビが映らず、数...

映画『私はあなたのニグロではない』

映画『私はあなたのニグロではない』 ジェームズ・ボールドウィンの未完のエッセイ「Remember This House」をベースに、本人のインタビュー映像、講演の映像、その他の映像資料による米国社会の白人および黒人をめぐるドキュメンタリー映画。2017年制作。ナレーションはサミュエル・L・ジャクソン。 言葉ではなく映像でもなく音楽でもない。フィクションでもなく、ノンフィクションでなければ伝わらないというこ...

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普通二種免許一発試験で合格まで

きっかけ 現在59歳。4月末に退職。前職は完全外資のIT系。70歳、80歳になってもウェブ開発じゃない、これを機に末永く続けられる職種をと考え、介護の資格と二種免許を取ることにした。2020年、コロナの年のこと。 自動車学校という方法も考えたが、いろいろと調べてこれなら自習+試験(一発試験)でいけるのではないかと判断。ちなみに運転歴は40年ほどで、安全運転には自信がある。 学科試験 5月はコロ...

映画「普通に死ぬ~いのちの自立~」

映画「普通に死ぬ~いのちの自立~」 コロナ下での自主上映会の可能性を知る意味もあり東高円寺のセシオン杉並というホールに見に行った。 「みかんぐみ」という障害者支援のNPOが主催の自主上映会。400人くらいのホールだが、1列おき2席空けての着席で100人定員で実施だった。平日の午前だったがそれくらいは入っていたと思う。 映画は静岡の重度障害者家族が立ち上げたホームの利用者と家族を追ったドキュメ...

映画「ジェニーの記憶」

映画「ジェニーの記憶」 ドキュメンタリー作家として成功した女性が48歳になって13歳のときのセックス経験を思い出すというストーリー。相手は40歳。それは恋愛だったのか虐待だったのか。 母に指摘され、当時の知人に話を聞くまでは記憶から拭い去られていた出来事。それを思い出し、当時の自分の姿と相手の男性を映像として描くとそれは明らかに…。それでも当時の「私」にとってはそれは自分の選択。そして自分が主体的に終わら...

映画「もう終わりにしよう。」

映画「もう終わりにしよう。」 NETFLIXでご紹介されて見てみた。付き合い始めて間もないカップルが彼の実家に行くことになり、その車内での会話から始まる不条理劇。 語り手が彼女なので、その彼女が主人公なのかと思いきや、彼女は本当は彼の空想の存在かもしれない、いや彼自身も年老いた掃除夫の空想の存在なのかも。と見るものの意識を二転三転させる、そうしたメタドラマを楽しむ映画。 エンドロールにも彼女は「yo...

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『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』ルシア・ベルリン

『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』ルシア・ベルリン ルシアは1936年生まれ2004年死去の20センチュリーウーマン。 少女時代はアラスカや米中西部で貧しい生活を送り、女学生時代は脊柱障害でギブス装着の毎日を余儀なくされる。その後一転して南米チリでの豪奢な生活をおくる。 しかし、帰国後2回結婚し、2度めの夫と離婚してからはシングルマザーとして4人の子どもを育てることに。その間、家政婦...

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「死ぬ時はひとりぼっち」レイ・ブラッドベリ

「死ぬ時はひとりぼっち」レイ・ブラッドベリ ブラッドベリの1985年の長編。主人公は売れない小説家。雨の夜、ヴェニスビーチ行きの路面電車で後ろに座った男に「死ぬときはひとりぼっち("Death is a lonely business.")」と囁かれるところから始まる探偵小説。 それだけでファンならぞくぞくするのだが、期待を裏切らないノスタルジーと夜のイメージの奔流に心地よく流されていく小説体験。 ...

映画『ハーヴェイ・ミルク』

映画『ハーヴェイ・ミルク』 米国でホモセクシュアルとして初めて選挙に選ばれて公職を得たハーヴェイ・ミルクのドキュメンタリー。1984年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門受賞作品。 サンフランシスコのゲイムーブメント興隆と、市長が多様性社会に理解があったこともあり、ハーベイはホモセクシュアルの教師を追放するべきとした第6条破棄の住民投票に勝利するなど多くのゲイ運動の成果を勝ち取っていく。 しかし、同じ...

映画『ゼロ・ダーク・サーティ』

映画『ゼロ・ダーク・サーティ』 CIAの女性調査員がビンラディンを発見して殺害するまでを描いたインテリジェンスサスペンス映画。 自分の人間性とか人生の喜びを犠牲にしてテロのリーダーを追い詰める様はもはや狂気を感じさせるが、これが911以降の米国の空気なのだろうか。 サスペンスとしては面白いのだろうが「事実に基づく」物語としたら暗澹たる想いとなるのが普通の人間だろう。 これをただの面白い映画と消...

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「専門知は、もういらないのか」トム・ニコルズ

「専門知は、もういらないのか」トム・ニコルズ 国際政治を専門とする米国の大学教授による現代メディア論。インターネット、Google、ケーブルテレビの台頭、知性を敵視する大衆、その結果としてのトランプ大統領などタイトルから想定できる範囲を十分カバーしている。 特に興味深かったのが米国の大学事情についての章「高等教育―お客さまは神さま」。現役の教育者としての著者からの米国大学レポートである。 日本もそう...

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「タイム・シップ」スティーヴン・バクスター

「タイム・シップ」スティーヴン・バクスター H.G.ウェルズの古典「タイムマシン」の続編として書かれたもの。19世紀末の現在に帰ってきた主人公が翌日ウィーナのいる未来に還ったところ、そこは改変された未来だったという出だし。 リングワールド的な惑星土木工学、それからスチームパンク的な20世紀の戦争期、さらに太古の世界でサバイバルと人類種の始原。その後、量子論的宇宙観からサイバーパンクを経て宇宙の始まりへ遡る...

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「トリフィド時代 (食人植物の恐怖)」ジョン・ウィンダム

「トリフィド時代 (食人植物の恐怖)」ジョン・ウィンダム 1950年代のSFで誰もが知っている傑作。ある夜、世界中を覆った流星群を見た人々は視力を失った。同時に可動能力のある食肉植物トリフィドが蔓延し、視力を失った人々を襲い始める。というポスト・アポカリプスとサバイバルのジャンルの魁となる小説。 「トリフィドの日」という映画にもなったが、原作はそちらとは違って生き残った人々(晴眼者も失明者も)がどのように...

映画「COME AND SEE(邦題:炎628)」

映画「COME AND SEE(邦題:炎628)」 1985年公開、ソ連制作の戦争映画。ナチスドイツ侵攻時のベラルーシ民間人への虐殺を描いた作品。監督のエレム・クリモフはこれ以後、映画を撮っていないという。 パルチザンに参加を試みた少年兵と森で出会った少女。家族のいる村での虐殺などを経て別の村で保護されることになるが、そこではさらに残虐な体験をすることになるというストーリー。邦題はその時期に住民とともに焼...