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映画『ブレードランナー 2049』

映画『ブレードランナー 2049』 前作の世界観や造形をお金をかけて大きくしただけ。その分密度が下がった。雪の降るロサンジェルスや郊外のディストピアも既視感。追跡者が追われるものになるというのは前回と同じ。違うのは追跡者がレプリカントであるということ。自分だけは特別と思いたがる人造人間の心象にじっくりと取り組めば原作のリスペクトとして成功したかもしれないのに。結局は純粋な人間が尊いというメッセージにがっかり。映...

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アニメ『ミッドナイト・ゴスペル』

アニメ『ミッドナイト・ゴスペル』 NETFLIXオリジナルアニメ。サイケでグロな映像を背景に、ドラッグ、死と再生、瞑想についてなどスピリチュアルで哲学的な話題を延々と繰り広げるという作品。各エピソードのゲストは薬物医、宗教家、死刑囚、オカルト研究家、葬儀屋など実在の論客。英語もわかりやすい。こんな時期には思いっきりぶっとんでみたい。 ゲストの紹介と用語集はこちら。

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映画『アナイアレイション-全滅領域-』

『アナイアレイション-全滅領域-』みた。ストーカー(タルコフスキー)のリスペクト作品だと思う。その場所に深く入り込むほど自分の心の奥底に向き合うことになるというところが。その心象を具現化した、異常かつ美しい風景や造形も素晴らしい。花と化す人間。浜にぽつんと立つ灯台。心通うことのないパートナーとのやりとりなど。

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映画『サスペリア』

リメイク版(2018)『サスペリア』良かった。ダンス学校の廊下に響く下品な笑い声。ハイジャック事件に騒然とする70年代ベルリンの世相。誰もが傷を負った戦争の影。儀式としてのモダンダンスの振り付けも、悪夢の映像も。クロエやティルダの扱いを見ると監督はかなりのやり手であることがわかる。これは旧作の換骨奪胎ではない。旧作へのリスペクトに溢れた昇華という。タイトルバックのタイポグラフィも色使いも秀逸。

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「流れる星は生きている」藤原てい

流れる星は生きている 藤原てい 引き上げ文学の中心的作品。ノンフィクションだと思われていることが多いが、藤原本人も言っているようにフィクションの部分も多く含んでいる。 引き上げとなったとき長男は6歳、次男は3歳、3女は生後1ヶ月であった。これは長春で夫と別れこうした3人の幼児を連れて、1年がかりで帰国するまでの記録である。 宣川の収容所での1年間の人間関係も厳しい。また、帰国に向けて出発し38度線を...

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「忘れられた日本人」宮本常一

忘れられた日本人 (岩波文庫) 宮本 常一 民俗学研究の名著。昭和初期に全国を歩き、地元の古老の話を聞き書きしたもの。 当時の高齢者なのでその若いときの話となると江戸後期から明治、大正時代にかけての話。まさに生きた近代の記録である。 現代の視点から見ると目のさめるような事実がある。例えば女の一人旅が珍しくなく大事にされたこと。大工など職人層が農家の次男三男を吸収するだけのニーズがあったこと。彼らは...

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映画「チャック・ノリス vs. 共産主義」

映画「チャック・ノリス vs. 共産主義」 再現映像とインタビュー映像による、共産主義時代ルーマニアの地下ビデオ産業を描いた映画。秀逸、タイトルもよかった。 国外からの情報閉鎖状態だった当時のルーマニアでは、非合法ルートで持ち込まれ秘密裏に個人の住宅で行われるビデオ上映会が流行した。そこではアクション、コメディ、サスペンスものなどが上映され、それが閉鎖国家の国民にとって西側の空気を感じる時間でもあった。 ...

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映画「ガザの美容室」

映画「ガザの美容室」 パレスチナのガザといえば想像通り銃声の絶えない紛争継続地区だが、そこある美容室に集う女たちのひとときを描いた密室劇。 容色の衰えた女、結婚間近の若い女、出産を控えた女、おしゃべりで詮索好きな女、信仰に厚い女、暴力的な恋人に翻弄される女などを配して、外では銃声や爆音が響く。キャラクターと舞台設定の作り込みが過剰だった。想像通りで救いのない展開だった。 ドキュメンタリーじゃなく劇映...

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「ハマスホイとデンマーク絵画」展@東京都美術館

「ハマスホイとデンマーク絵画」展@東京都美術館 数年前にあったハマスホイの大規模個展が忘れられなくて行ってみた。前回はなんと2008年だから10年以上前になるのか。 ハマスホイは新しいのがなくて、しかも前回見た建物のがなくて少しがっかり。しかし、それ以外のデンマーク作家の部屋が素晴らしくてしばし滞在。 ハマスホイと同時代の作家による室内がよかった。ラウリツ・アナスン・レング「遅めの朝食、新聞を読む画...

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映画「彼らは生きていた」

映画「彼らは生きていた」 公開翌日に青山に行ったらまさかの満席!で、翌週の金曜夜の回。これまた満席で追加席まで出てた。なんでドキュメンタリー映画なのにこんなに人気があるんだろう。 100年前のフィルムを最新の技術でフレーム補間し、彩色。音声もアーカイブのテープを補正してるのでクリアー。そんなことで驚くような映像に仕上がった。まるで近頃のビデオで撮った映像のよう。 しかし、苦境でもユーモアを忘れない、...

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「ケーキの切れない非行少年たち」宮口幸治

「ケーキの切れない非行少年たち」宮口幸治 少年非行について認知機能という面にフォーカスし、考えるきっかけとなる一冊だった。 宮口は少年院勤務の経験のある臨床心理士。その非行少年ケアの提言は、そもそも非行少年(少女)たちは認知能力が低いので、その対策をしない限り更生は期待できないということ。 問題はそのことに気がついていない関係者が多く、紋切り型の対応を継続し、結果として再犯者を生み出すことになってい...

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「チャーズ 下―中国革命戦をくぐり抜けた日本人少女」遠藤誉

「チャーズ 下―中国革命戦をくぐり抜けた日本人少女」遠藤誉 衝撃的な引き上げ体験の記録「チャーズ 出口なき大地」の続編。単行本の「続 失われた時を求めて」に天津編を加えたもの。これも想像に絶する苦悩に満ちた道程の記録。物理的な苦痛のみならず、精神を守るためか感覚を閉ざして過ごした幼少期の精神史として壮絶。 遠藤は今日、祖国で物理学研究者として成功しても、なお記憶に呼び出すことのできないことを抱えたまま今日...

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Speechless – Rupert Holmes

Speechless - Rupert Holmes 相手の女に愛されているのにそう思えないの?それとも勝手に思い込んでるだけ?絶望的に恋してる男の矛盾した心の一曲。あえて散漫で納得しない歌詞の世界が魅力的。 ルパート・ホルムズは名曲がたくさんあるのでもっと評価されてもいいのになあ。 I can make a speech When the mood comes to me Yes, i...

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「チャーズ―出口なき大地」遠藤誉

「チャーズ―出口なき大地」遠藤誉 「魂の脱植民地化とは何か」深尾葉子で取り上げられており、興味をもって読んでみた。引き揚げの体験談や書籍は数多くあれど、これは想像を絶する凝縮された体験。 遠藤の家族は戦前長春に暮らしていた。彼女の父は薬品製造販売(ギフトール)で成功しており、その社会的意義も中国社会から認められていた。それもあって戦後も現地に留まっていたのだが、国民党が支配する地域を八路軍(共産党軍)が包...

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「日本人のための憲法原論」小室直樹

「日本人のための憲法原論」小室直樹 日本国憲法のみならず、民主主義と資本主義の歴史的成立について親しみのある語り口で伝える良書。 そもそも人権という概念は神のもとでの平等という意識から始まり、それにはプロテスタンティズムの普及が必須であった。そこまでは分かるのだが、日本にそれを普及させるために天皇を中心の国にしなければならなかったという理論展開については疑問がある。日本人の平等意識は明治時代になってから急...

映画「台湾、街かどの人形劇」

映画「台湾、街かどの人形劇」 台湾の伝統芸「布袋戯」の名人とその師である父との葛藤、そして消えゆく芸能を受け継ぐ弟子たちを描いたドキュメンタリー。映像はまるで消えゆく芸を記録するかのような固定カメラでの長回し。退屈するかと思いきや緊張感あふれる映像であった。 後日、台湾人とこの映画について話すことがあったが、彼の地での伝統文化への援助のなさは日本の比ではないという。こうして映像として保存されることなく消え...

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「生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却」安冨歩

「生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却」安冨歩 安冨をある分野の専門家とすることに意味はない。それで思想家と呼ぶことにしているのだが、本書はその思想家としての安冨の経済学への批判と経済学があるべき方向についての指針である。 彼の近・現代経済学への批判は徹底している。そもそも市場経済理論は「相対性理論の否定」「熱力学第二法則の否定」「因果律の否定」によって成り立っているのだという。 需要と供給...

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「魂の脱植民地化とは何か」深尾葉子

「魂の脱植民地化とは何か」深尾葉子 さいきん集中的に読んでいる安冨歩の参加している叢書「魂の脱植民地化」の最初の一冊。 さまざまな「魂の植民地化」のケースを、ゼミ学生のレポートや「ハウルの動く城」、福島からの自主避難者の声などをケースとして取り上げている。「蓋」と「自己」そして「憑依」がそれを理解するためのキーワードである。 しかし、もっとも興味深いのは深尾本人の人生を取り上げているということ。 ...

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映画「20センチュリー・ウーマン」

監督のマイク・ミルズはミランダ・ジュライの配偶者。だからという訳ではないのだが、何となく「君とボクの虹色の世界」を思い出した。どちらも女性目線の映画である。 劇中の息子が母親を評して言う「不況時代の世代」の女性をアネット・ベニングが演じるが、彼女以外にも10代や20代の女性が登場する。あとは10代の少年と40代の男性が。いずれも1979年という年を生きた人間たちである。 1979年、西海岸の小さな町(サン...

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「合理的な神秘主義―生きるための思想史」安冨歩

「合理的な神秘主義―生きるための思想史」安冨歩 そもそも人は「何が正しいことなのか」を知り得ぬものだとしたら、どうして我々は生きていけるのか。本書は思想家としての安冨がこうした問いの答えを求めて古今東西の知と思想を遍歴したものである。 孔子、仏陀からスピノザ、マルクス、フロイト、ウィーナー、ミルグラムと古今東西の思想家を取り上げているが、彼らはいずれも一貫して「正しく生きるための知識」を求めている者である...