「フルクサスとは何か?―日常とアートを結びつけた人々」塩見允枝子(フィルムアート社)
うらわ美術館で多くの関連作品を目にして興味があったので購入。
フルクサスは1960年代にニューヨークで発足した、ジョージ・マチューナスを中心とした運動。ハイアートに対抗する前衛運動のひとつで、日本のネオ・ダダイズム・オルガナイザーなどとも連動した。
著者の塩見はこの初期の段階にニューヨークで共に活動した音楽家でありアーティストでもある。
フルクサスという運動の全体像を概観する包括的な研究書ではないが、実際にマチューナスやその後のキーパーソンと多くのアートイベントに参加してきた体験が豊富に書かれている。
メカス、ウォーホル、ボイス、オノ・ヨーコという有名人も含め、多くのアーティストがニューヨークの自由な空気のなか、アート活動に没頭したことがイキイキと伝わってくる。
また、当時はまだ渡航制限や換金制限もあった時代だったと思うが、多くの日本人アーティストが渡航し、ニューヨークのアーティストたちに認められていたことがうれしくなる。
同じアーティストの海外生活でも藤田や岡本による戦前のパリはあまりにも遠すぎて歴史のなかにかすんでいる。しかし、戦後のニューヨークであればあの街、このギャラリーと思い浮かぶ。
それにしても、音大を卒業したての女性がニューヨークに渡って、アルバイトをしながら多くのアーティストとコンセプチュアルな作品を発表していたなんて、ひとつの青春群像だと思う。
その後の充実した作家活動も含めて小説にならないかと空想する。有川浩あたりどうだろうか。
フルクサス作品や関連資料はうらわ美術館に豊富らしい。ここで「フルクサス展-芸術から日常へ 」という展示会があったとのこと。どんな展示会だったか空想して楽しんでいることしかできないのが残念。