『昭和天皇実録』を読む(原武史)岩波新書
皇太后との確執、新嘗祭などの祭祀への姿勢、最初の欧州旅行でのバチカンへの接近と戦後のカトリックへの改宗の動きなど、こんなたくさん読み取れるのかと関心。こうした歴史家の解釈本をもっと読みたくなった。
特に皇太后による終戦にかけてのさまざまな影響が興味深い。女系天皇をめぐる議論が近年起こっているが、反対論にはこの記憶があるのではないか。「日本のいちばん長い日」の裏側では皇室におけるもうひとつのいちばん長い日があったと指摘がある。
敗戦後、天皇は責任の取り方として退位を封じられた為、カソリックへの改宗を考えていたとの指摘も。実際に天皇はこの時期、多くのカソリック関係者と面談を繰り返している。
今城誼子という「魔女と呼ばれた女」についても興味深い。これは皇太后の女官だった人で、後年皇后への影響力を持つことになったという。皇太后の影響力が死後にも及んだということか。