『コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ』@東京国立近代美術館
米国から無期限貸与された戦争画のコレクションをところどころに配した企画展。戦争の記憶をどのように伝えるのかをテーマとしているとのこと。戦前から戦後にかけての絵画作品の間に当時のメディア記録(新聞、雑誌、チラシ、地図)を配するという展示構成である。
だが、絵画>記事>絵画>記事という展示ではあまりにも稚拙な手法ではないか。例えば、記憶するのは人間であり人間がどのように戦争を記憶してきたのか、そしてその記憶がどのように変化していったのか、などこのテーマにはより深みのある考察と展示手法が必要だと思う。
そもそも「戦争画」であるが、返還(貸与)されてからその全貌が一挙公開されることが長らく期待されていた。それが各種の事情によって常設展で小出しにしてきたのがこれまでの近美の姿勢だった。今回の企画展も常設のそれと変わらない。今まで常設で見たことのある作品ばかりであり点数も大差ない。
もし、戦争画を通じて今日のあの戦争の記憶を問うのであれば、全作品の一挙公開こそが必要だったのではないか。戦争を伝えた日本絵画というメディアの意味を鑑賞者に問うためにはそれが最善の方法であろう。
今回の作品で最も見応えがあったのはそれら返還された戦争画ではなく「原爆の図 第2部 火」と広島平和記念資料館からの市民による被爆スケッチ集だったのは皮肉だ。