『鬼火 底のぬけた柄杓』吉屋信子

『鬼火 底のぬけた柄杓』吉屋信子 吉屋の傑作小説選。 神に心身を捧げそれ以外を自ら排除した女性の人生の終わりを描いた「童貞女昇天」。戦後、けちな欲望に走った男…

『踏切の幽霊』高野和明

『踏切の幽霊』高野和明 これもホラーではなくゴースト・ストーリーで、一般小説としていい話に落ち着いてしまっている。しかし、2022年に書かれたこの小説はどうし…

『禍』小田雅久仁

『禍』小田雅久仁 ホラーではなく不条理小説。常に一人称でひたすら自分の深みへ潜っていくような話ばかり。登場人物が「私」および「怪異のある者」だけなので普通のダ…

『台湾研究入門』若林正丈、家永真幸編集

『台湾研究入門』若林正丈, 家永真幸 台湾研究の第一人者編集による台湾研究論文集。法制度から教育、流行歌、中国の影響、台湾人アイデンティティまで、台湾研究にお…

『佐藤春夫台湾小説集-女誡扇綺譚』

『佐藤春夫台湾小説集-女誡扇綺譚』 佐藤春夫といえば大正・昭和に活躍した文学者だが、彼は1920年の夏に台湾を旅した。日本統治が始まってから25年目のこと。本…

「台湾語と文字の社会言語学」吉田真悟

「台湾語と文字の社会言語学」吉田真悟 日本の台湾語研究者による台湾語の文字に関する調査論文。 日本統治時代以前の台湾で共通語だった台湾語(閩南語、ホーロー語)…

『鶴見俊輔集 4 転向研究』

『鶴見俊輔集 4 転向研究』 鶴見が「思想の科学」の仲間と行った『転向研究』の中から鶴見単著の論文をまとめたもの。 これは戦後文化人の過去を興味本位で掘り返し…

『春にして君を離れ』アガサ・クリスティー

『春にして君を離れ』アガサ・クリスティー 珍しく読んだことのないクリスティー作品で世間の評判が高かったので試しに読んでみた。 時期は第二次大戦前、裕福な英国婦…

『暗礁』巴代(パタイ)

明治4年、琉球王朝へ納税して帰路についた宮古島の船が台風に遭遇し台湾南部で遭難した。船には宮古島の島主他、身分の高い者たちが乗っており命からがら上陸したが、地…

『台湾総統選挙』小笠原欣幸

『台湾総統選挙』小笠原欣幸 台湾政治史研究者による民主化以降の台湾の選挙に関する研究論文。1996年の第1回総統選挙から2016年の第6回まで、それぞれの選挙…

『増補版 図説 台湾の歴史』周婉窈

『増補版 図説 台湾の歴史』周婉窈 台湾の歴史研究者による台湾史解説書。若林正丈先生の台湾史講義でも推薦されていた一冊。台湾人によるものだけあってエピソードに…

『都市と都市』チャイナ・ミエヴィル

『都市と都市』チャイナ・ミエヴィル 架空の都市「ベジェル」を舞台にした警察小説。本書の主役はこの一風変わった都市である。ベジェルはおそらくバルカン半島の黒海側…

『一億年のテレスコープ』春暮康一

『一億年のテレスコープ』春暮康一 遠未来、遠過去、近未来を交互に描きつつ、「宇宙の果てを探り続ける意思」がテーマのSF。 現代に生きている日本人が主人公なのだ…

『懐郷』リムイ・アキ

『懐郷』リムイ・アキ 現代の台湾原住民族タイヤル族女性、懐湘(ホワイシアン)。 小さな村に生まれ、若くして過酷な結婚生活を過ごし、やがて都会の水商売で成功しな…

『南光』朱和之

『南光』朱和之 日本統治時代から白色テロを生きた台湾の写真家、鄧南光(本名:鄧騰煇)。彼の生涯についての小説である。 各章ごとに作品にフォーカスし、それが撮ら…

『日本アパッチ族』小松左京

『日本アパッチ族』小松左京 なぜかこれだけは読んでなかった小松左京の長編デビュー作。高度成長期の大阪の廃墟で生まれた食鉄人種が右傾化日本を揺るがしていくという…

『水俣病闘争 わが死民』石牟礼道子編

『水俣病闘争 わが死民』石牟礼道子編 執筆者は石牟礼道子、渡辺京二など主要な人物はもちろん、それ以外にも患者、医師、弁護士、学生、記者など多彩なメンバーが原稿…

『不在と読書』並木毬絵

『不在と読書』並木毬絵 文学フリマに行ってふと目について購入することになった。 鎌倉在住の女性の読書三昧の日常を綴った日記。自費出版どころか個人出版なのでどん…