アントワープ王立美術館コレクション展@東京オペラシティアートギャラリー
アントワープ王立美術館コレクション展@東京オペラシティアートギャラリー
暑い夏には19世紀のヨーロッパ絵画に惹かれる。ということで、時間の空いた平日の夜に行ってきました。印象派、象徴主義、表現主義、抽象、シュルレアリスムと激動の19世紀美術で盛り沢山です。
最初の部屋で気に入ったのが、小品ながらシャルル・メルテンスの「カル・ヴァリーの庭」。アパートの中庭に椅子を持ち出し、足を投げ出してくつろぐ女性。ここちよい日陰とくつろいだポーズ。色使いもモチーフも同時代のパリみたいに押し付けがましくないのがベルギーらしいところ。
「象徴主義とプリミティズム」の部屋で一番惹かれたのがグスターヴ・ファン・ウーステイネの「眠る男」。羊の囲いで膝を抱えて眠り込んでいる3人の男。「眠っちゃダメだ」とばかりに揺り起こそうとする男。なぜか手前には黒い木靴が脱ぎ捨てられている。奥の黒い木と白い柵も印象的。
キャプションには聖書の言葉から素材を取ったらしいと書いてあったが、私はメキシコ絵画とかラテンアメリカの文学を思い浮かべた。バルガス=リョサとかガルシア=マルケスの小説のエピソードにあったような。この一枚の絵だけでひとつの短編小説を読んだくらい楽しめた。
「ポスト・キュビズム」の部屋では、ラマー(アンリ・ラマーケル)の「ペタンク」が素晴らしい。田舎町の教会前の広場でペタンクに興じる村人たち。それを睥睨するかのように背中を向けて大きく立ちはだかる二人の男たち。画面がこの2名でいっぱいで、その向こうでボールを投げようとする人などは股の間から見えている程度。南仏で描かれたとのことだが色彩は寒々とした無彩色。
一見すると不穏な雰囲気なのに、しばらく見ているとユーモアが湧き出してくる。この作家はどうしてこんな構図、こんな色使いで描いたんだろ、と考えると可笑しくなってくる。そうするとペタンクに興ずる人々も、手前で手を後ろに組んで立っている男たちもヘンな奴らに見えてくる。
どうかするとこんなに楽しめる絵に出会えるから古典とか近代は侮れない。
それにしても、Bunkamura ザ・ミュージアムでもベルギー作家展やってるし、今年はこの国のことをよく見かけるのはなぜなんだろう。