ヴァンジ彫刻庭園美術館・IZU PHOTO MUSEUM
時間もお金もないけど遠出がしたいなあ、ということで日帰りできるけど満足度たっぷりのヴァンジ彫刻庭園美術館とIZU PHOTO MUSEUMへ行ってきました。
東京からこだま号で1時間の三島から無料送迎バスで富士の麓の丘の上にクレマチスの丘はあります。5月末だったから庭園はクレマチスが誇らしげに咲いていました。
ジュリアーノ・ヴァンジはイタリアの彫刻家。素材を生かした彫刻で人間をモチーフとしているようです。
立ちはだかり、呆然とたたずみ、歩き出し、子どもを誇り、悲嘆にくれ、絶望する人間たちの姿はいずれも異常に肉体が歪んでおり、あるいは逞しさやひ弱さが強調されています。その姿は人間の底深く荒々しい魂を具象化しています。
しかし、そんな荒々しい姿をしていても彫刻の表面はあくまでも滑らかで、思わず触ってみたくなる。また、いつまでも触っていたくなるような心地よさでした。
21同じ大理石でも薄い青とピンクがかったものを組み合わせたり、木材による彫刻では彩色をほどこしたり。また、ガラス、金属、プラスチックによるものもあり、素材と材質への高度な感覚がなければ彫刻はできないものですね。
それにしても、子どもを掲げる手のひらの大きさ、歩み去る女の後ろ姿のたくましさ、嘆き悲しむ老人の小ささ、背中にぐいと引かれた腕のはちきれそうな筋。過剰な形態が多くのことを訴えかけます。
巧妙な照明が施され、じっくりと作品と対峙出来る展示室も素晴らしい空間ですが、美術館へのアプローチや庭園がまた素晴らしい。
丘の芝生、巨木の木陰、ベンチ、睡蓮の池。誰もが心地よく感じるものたちが青空の下でハーモニーを奏でています。そこにヴァンジの彫刻がわずかな毒と刺激を持ってあちらこちらにたたずんでいます。
クレマチスの花壇の中へ降下する階段を下ると、そこには集団の暴力とそれを怯えた目で見つめる恋人たちがいたりして。
そんなアートと庭園の幸せな結婚のような場所ですが、それを支えているのであろう多くのガーデナーたちが仕事をしていました。絶えることなくクレマチスの花や芝生のお世話をすることが、この場所の祝祭感を維持しているのでしょう。おつかれさまです。
21_2さて、ヴァンジ彫刻庭園美術館の向かいにあるのがIZU PHOTO MUSEUM。空間設計と坪庭は写真家の杉本博司によるものです。
ゆるいステップを一段ずつ上がって蔓がからむパーゴラのファサードからもう素晴らしい。
また、入り口正面と展示室奥に坪庭があるんだけど、この苔と白壁と石積みの壁の空間が映像としての完成度が高い。それが映像ではなく空間であり、時間と気候によって変化するのであろうとまた心地よい空想を誘う。
三島というと東京から遠いような気がするが、東京駅から1時間に無料バスで20分。興味のある企画展があれば、アートとランチを一日かけて楽しむつもりになればちょうど手頃な距離だと思う。