20世紀フランス絵画の挑戦「アンフォルメルとは何か?」@ブリヂストン美術館
20世紀フランス絵画の挑戦「アンフォルメルとは何か?」@ブリヂストン美術館
第2次大戦後に生まれた抽象以後の運動であり、日本の前衛やアバンギャルド作家に影響を与えたことは知っていたが実際にまとめて見たことがなかった。
震災(と原発事故)の影響で西欧の美術館から何点かの作品が貸与拒否されたことを聞いていたが、ブリヂストン美術館の収蔵品だけでも充分な企画展になった。
「抽象絵画の萌芽と展開」と題する最初のパートはモネ、ピカソ、クレー、カディンスキーと近代のいち断面を表現するには充分なバリエーション、そして点数だった。ここで抽象へとつながる動きとしてあらためて見るセザンヌやモネはとても新鮮。
アンフォルメル前夜の3人の作家が集められている部屋は、この展示会のハイライトだった。
フォートリエはキャンバスに石膏を重ね、それに彩色している。戦争中の虐殺の記憶をテーマとしている作品もあり、それらは意識的かつ表象的だった。
デュビュッフェはアール・ブリュット風で天真爛漫のように見えるが、かなりの厚塗りに削り取りなどを駆使して技巧的でもある。
ヴォルスは細い線によるスケッチ風エッチングで、最も無意識とか抽象を想起させる。彼が一番私がイメージするアンフォルメルらしかった。
ところで、第3の部屋の入口に印象派以降の美術運動の流れがまとめられたパネルがあったが、ダダもシュールもすべての運動がアンフォルメルに収束していく構図はどうなのかと思った。
フォートリエらの作品群は大戦前後の西欧作家の人生と重なって楽しめたが、展示会全体として「アンフォルメルとは何か?」という問いには納得が得られなかった。しょせん数多い西欧の美術運動のひとつに過ぎなかったのではとの印象が残った。
それよりも、雨の平日の午後だったので来場者が少なく、収蔵品であるピカソの「腕を組んですわるサルタンバンク」とマティスの数点がある部屋を独り占めできたことが幸せだった。
それから関根正二「子供」を初見したが、鮮明な青い背景に赤い上着で、彼にこんな作品もあったのかとびっくりした。また、国吉康雄の「横たわる女」を見ていて、きっとこの人はどの女性にも優しいんだろうなあと思った。