井澤由花子展@ガレリア青猫
高原リゾートのプール、森林の小川のよどみなど水辺の風景を水彩で描き続けている方。二人目の子どもが生まれて、妊娠中に胎児がみる風景をイメージしたのが今回の作品とのこと。
体内、生命を映像で表現すると抽象に接近するものが多い。ずっと以前に練馬区美で見た若林砂絵子を思い出す。こちらは衝撃的な色彩の組み合わせで種子とも内臓ともつかない形態を描いていた。夭折がつくづく残念。
井澤は手慣れた水彩の技でかろやかに、水のある森の風景と見え隠れする人物を配置して描き出す。
色がずっと多くなった。水彩で色が多いともっと難しいと思うのだが「慣れてますので」とサラッと言ってた。乳児をふたりも抱えての制作活動は苦労もありそうなものだが本人に会うとあまり感じさせない。
水を描くものでは水面と水面に写り込むものの表現が見どころなのだが、今回の作品ではその境界を感じなかった。それは水面と水面下が等しくあるものと感じさせる。むしろ水中に親密感を多く覚えた。
それでもやはり描くのが水面という対象であるだけに、観るものが水平とこれに対する垂直を強く意識するのは当然。むしろ斜めや上下のない空間構成も見てみたい。
胎児は逆さにあるのが常態と聞く。また、水中状態と無重力は感覚が近いとのことも思い出した。
台湾、韓国などのアートフェアにも出品と活躍中の才能である。
ところで西荻が意外といい街になっていることに気がついた。アンティークの店がいくつかと気の利いたカフェがある。このギャラリーも商店街の一角にいい感じである。もう何軒かあれば定期巡回するのだが。