映画「アヒルの子」@ポレポレ東中野
作家のしんぞうさんのブログで紹介されてて、がぜん見たくなったドキュメンタリー映画。
監督の小野さやかは映画製作時は若干20歳。幼年時にヤマギシ会幼年部にあずけられたことを両親に捨てられたと感じており、そのことで成長した今日まで家族の中で自分を押し殺して生きてきた。そしてドキュメンタリー映画を作ることで家族の一人ひとり、そして自分の過去に向きあうことにした。
家族を壊したい。その思いにまで至った彼女は家族一人ひとりをカメラの前に引きずり出して過去をえぐる。そしてヤマギシ会幼年部の行いについてその担当者にも迫る。厳しくもむごい行いだが、それによってそうしなければ救われない彼女の現在が実感を伴って浮かび上がってくる。
彼女の語る過去、家族の語る過去、関係者の語る過去、いずれも感情的であいまいではある。しかし、カメラの前の姿は真実だとするドキュメンタリー作家のあるべき態度がそこにあった。
辛い過去があっても、それを忘れて前向きに生きるのもひとつのやり方です。しかし、徹底してその過去にこだわり、明らかにせずにはおかないというのも、やっぱりひとつのやり方なのです。その激しい痛みを伴うやり方を、若い女性が選ぶというのも現代という時代なのでしょう。そして、それは決して否定すべきことじゃない。映画を見てそう思った。
映画の中ではとても怖かった彼女ですが、上映後のトークショーではすっかり可愛い女性になっていました。それにしても制作してから関係者の説得で上映にいたるまで6年間かかったとのこと。その6年間に心からおつかれさまと帰り際に声をかけた。