相笠昌義展「日常生活」@損保ジャパン東郷青磁美術館
定規を使ったようなかっちりとした背景に多彩な人物を絶妙に配して、ほのかなユーモアを醸し出させる技はもはや完成の域を超えている。横断歩道、交差点、駅のホーム、動物園、いずれの場所であっても主役はそれぞれの目的があったりなかったりしてそこに集う人間たち。群像をこんなに楽しそうに描く人は初めて見た。
作品年表をよく見るともう50年近いキャリアのある人なのに2009年の作品がたくさんある。しかも小品じゃなくて大作ばかり。90年代と00年代がほとんどない。この間に何があったのか、09年に何があったのか気になる。
奥さんと子どもふたりを描いた作品も年代を隔てていくつかあり、09年の作品であってもほとんど子どもが大きくなっていないのが、作家の心の裡を覗き込むようで興味深い。
この美術館の目玉のセザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンも見てきたが、何か寂しい、哀しい展示の仕方だった。作品と作家に対する理解と愛情をもって見せ方を根本的に考えた方がいいのではないだろうか。水と緑に囲まれた大山崎山荘のモネは幸せそうだった。