ジョセフ・クーデルカ「プラハ1968」@東京都写真美術館
写美2階の展示室をひとつの空間として、4つの壁と中央の小ボックスの壁に写真やアーカイブ資料を展示してある。
来場者のざわめきとビデオの小音声が低くこだましてこの展示室を不穏な騒乱の空気で満している。
プラハの春は1968年に起きたチェコスロヴァキアにおける平和的な民主化運動。同国はこの運動でソ連を中心とした共産圏体制からの脱却を志向した。
これに危機意識を抱いたソ連は1968年8月に同盟国であった同国へ軍隊を侵攻させ、当時のチェコスロヴァキア指導者であったドゥプチェクらを拘束、全土を支配下においた。
平和的に民主化運動がすすめられていたチェコスロヴァキアの首都プラハは外国の軍隊に蹂躙された。写真家のクーデルカはこのプラハ侵攻の1週間の街と人々を記録した。
美しい街並みと文化的で冷静な人々を突然に襲った出来事。唖然とした態度がやがて自国を踏みにじられた怒りに変わり、そして動乱が発生する。
しかし、冷静さを求める呼びかけに応えてデモが行われる予定だった広場は人気がなくなる。
自分の街の石畳を踏みにじっている戦車に乗った外国兵に対し、あくまでも言葉で対しようとしている市民の姿が感動的。
彼らのその文化的で冷静な態度が20年後の東欧革命につながり、ソ連らの共産圏体制を瓦解させることになったのだろう。
こうして40年前の事件を見ていると、つい数カ月前の日本の状況を思い返して複雑な心境になる。
日常を突然に襲った壊滅的な出来事に、高い民度を持つ国民一人ひとりがどのように対応したのか。その態度が20年後にどのような結果をもたらすのか。
この展示会が伝えるものは今日のわたしたちのありようをも問いかけているように思う。