ヴァンジ彫刻庭園美術館+IZU PHOTO MUSEUM
伊豆の温泉旅行の帰りがけに三島のクレマチスの丘へ行ってきた。夏の午後でもあの庭園は冷んやりと爽やかだった。
ヴァンジ彫庭園美術館の企画展は「東海道 新風景ー山口晃と竹崎和征」。両名とも当地に滞在し、近辺の風景を題材に作品を制作したらしい。
山口はいつもの和風のモブ絵画で空想のにぎわいを描いていた。竹崎は水を張ったタライにはためく氷の旗など、日常的なオブジェによってちょっと気取った地方都市の夏を表現。
しかし、どちらもこの土地の過去、現在、未来をどのように捉えているのかが見えてこない。
三島は風光明媚ではあるが、それだけという印象で、とらえどころのない土地ではある。しかし、歴史の長さに準じた深みがあるはず。地元の作家の解釈を見たいところだが三島出身の作家というと思いつかない。
一方、IZU PHOTO MUSEUMでは「幻景富士ー富士にみる日本人の肖像」。富士という日本のシンボルを中心に据えて、近代以降のこの国の姿を多方面から切り取っている。
そこには軍国主義の象徴としての富士も、進駐軍による占領のシンボルとしての富士もある。また、日本人による日本人を被写体にした写真もあれば、日本人に粉した外国人の写真も。
特に印象的だったのが、当時の名士がヒトラーに寄贈した富士山の大判写真。これをヒトラーが見たのか。見たら何を思ったのだろうか。ヒトラーユーゲントの紅顔の少年たちが富士登山した記録写真もあり、地方都市と戦前・戦中のドイツとのつながりは意外とあるのかと興味深かった。
「時の宙吊り」も非アーティストによる写真展として秀逸だったが、今回の展示会も同系列のキュレーションで知的な満足度が高い。膨大なアーカイブから選ばれた写真群だが、むしろ点数が多すぎるくらいだった。