「生誕100年 岡本太郎展」@東京国立近代美術館
ドラマ最終回の翌週だし日曜美術館で取り上げられた当日だしでメチャ混み。
しかし、作品はおおむね川崎か青山にあるものばかりで初見のものは少なく、じっくりとしたくなる目玉作品はなかった。
展示構成は「7つの対決」と題して、岡本太郎が対決したもの、いわく「ピカソ」「きれいな芸術」「わび・さび」などとの対決でセクション分けしてある。いずれにしてもあのスペースで全生涯展なので散漫な印象がある。
岡本の場合、平面、立体、写真、パブリックアート、著作と表現形態が多岐にわたり、関わる対象もシュール、ダダ、前衛、民俗学、社会、思想となる。これらがそれぞれ相互に影響しあい、関連しあっている。
大量動員の展示会なので仕方ないのだろうが、動線固定の展示構成ではこうした豊穣な対象を表現しきれないだろう。むしろ、時間と空間と手法を面的に広げた表現が必要なのではないか。例えば、展示とパフォーマンスとセミナーが一体となった総合展方式などを空想する。
また、岡本の主要な仕事としてパブリックアートがある。「太陽の塔」はもちろん、「明日の神話」もそうだろう。また全国各地に設置された多くのオブジェや壁画。これらを展示室で表現する方法が模型や図面、下書きだけとは工夫がない。
開かれた場所で多くの人の眼に触れることを望んだ岡本だから、近美の前庭に何かできなかったのだろうか。例えば、せっかく万博公園で太陽の塔の顔部分の実物展示があるのだから時期をずらして持ってくるとか。「建築はどこにあるの?」では芝生に大きなものを設置していたよね。
物販のにぎわいだけが目についた大規模展覧会だった。
万博公園の賑わいを伝え聞くと、むしろ関西での岡本の愛され方の方が本物なような気がする。
ところで、岡本の全生涯、全仕事を概観し読み取ることはとてつもない作業になる。未だに彼の包括的な研究書の決定版が出ていないのも無理かなぬことだと思う。
しかし、その分、現代史とアートの研究対象としては取り組みがいのあるテーマであり、しかもある程度資料がまとまっていることから、どなたか研究者が手がけていただきたいものだ。