『台湾文学の中心にあるもの』赤松美和子

『台湾文学の中心にあるもの』赤松美和子

書評・評論ではない。エッセイでもない。日本語で読める台湾の文学作品を網羅した単なるブックガイドだった。

本書タイトルへの赤松の結論は「政治」とのことだが、すべての文学者のモチベーションが「政治である」とはあまりにも不遜であろう。小説や評論を書く原点は常に「個人にある」のは古今東西変わりがない。それが政治に決着することはあるだろうが。

本書では取り上げられていなかったが映画『日常対話』の監督ホアン・フイチェンの『筆録 日常対話 私と同性を愛する母と』は、レズビアンである母との生活と彼女との対話を創作の原点としている。やがて家族、そして性的少数者としての人生という「普遍」へと思考をいざなう名作文学である。

どの国であろうが「◯◯文学の中心にあるもの」が「政治であるはずがない」というが私の結論である。台湾人文学者も同意するのではないだろうか。