『エキストリーム・センター』酒井隆史, 山下 雄大(編集)
「エキストリーム・センター」「エキセン」「極中道」。耳慣れない用語である。しかし、現代社会・政治の傾向として重要なものと思い読むことにした。
「極中道」とは肯定的な意味ではない。極右と極左に関わらずイデオロギー対立を否定し、「どちらでもない真ん中」とのスローガンで社会から政治的対立を排除し、新自由主義と権威主義を推進する政治的態度のこと。しかも、この「エキセン」がファシズムへの地ならしとして意識的に使用されているとのこと。
「民主主義の条件とは政治的対立が不在の状態ではなく、抗争が存在する状態である」との言説が新鮮である。社会から議論を排除し、一見前進的な政策を実行するというのはそのままファシズムのことである。一方でそれを歓喜で支持する市民の様子も20世紀初頭のドイツを思い起こさせる。
本書は日本人政治学者による論文アンソロジーである。内容は多岐にわたり、エキセンの源流であるフランス革命、現代政治の世界的潮流、フェミニズムにおけるエキセン的態度、EU離脱時期における英国政治、東大学費値上げ闘争から説くエキセンへの闘争方法などを取り上げている。(Amazonの同書ページには目次がある)
全体を通じまだ概念も言説もこなれているとは言い難い。しかし、現代社会と現代政治を捉える新しい概念をいち早く書籍化する姿勢は高く評価できる。
私は一読してナンシー・フレーザーやデヴィッド・グレーバーを再度読み返したくなった。
また、菊池夏野の章にあった「リーン・イン・フェミニズム」という言葉が印象的だった。菊池は女性が社会的に高い地位につき、高収入となることを称揚するこの言葉に疑義を呈している。
この社会的傾向(リーン・イン・フェミニズム)は女性を資本主義的価値に取り込もうとする態度にすぎない。そして結局は新たな不平等と搾取を再生産することになっているのではないかとしている。本人のブログがあるのでメモしておく。https://thirdfemi.exblog.jp/