竹内公太「公然の秘密」@XYZ collective (SNOW Contemporary)
アートフェア東京で明日までと聞いて、あわてて渋谷からバスに乗った。XYZ collectiveは世田谷の閑静な住宅地にあるコンテンポラリーギャラリー。
フクイチライブカメラの指差し作業員という最も現代的なモチーフではあるが、会場は思いのほか子ども連れの母親や高齢者が多く、世田谷という地域の文化度の高さを思い知った。
ギャラリーに着くと外側のシャッターに小さなボックスがあって、誰かが座っている模様。気にせずに小さなドアから入ると、内部にはあのフクイチのライブカメラ映像が大きなスクリーンにある。また、それがインターネットを通じてどのように拡散され、また自らにフィードバックされたのかの概念図があったりとかなりコンセプチュアル。
そうした説明書きとは別に一番怖かったのが、2011年3月16日くらいからのテレビ報道とツイッターのタイムラインのキャプチャ。あの時、誰がなんと言っていたのか、翻って自分は何をしていたのかを問い直される思いがした。実際、私は311前後の自分のタイムラインをいまだに直視することができない。
さて、外側のボックスには作家本人がいるらしい。シャッターの内側には椅子があって、ここに座って糸電話で作家と対話ができるようになっている。私も順番を待って、しばし対話してみた。竹内はこのパフォーマンスは会期中毎日やっていたらしい。すごい。
とりとめもない話しかしなかったのだが、彼は指差しという行為によって各方面に迷惑を書けてしまったことを深く反省している、ということはよく分かった。
私はこの対話をして、糸電話というメディアに興味を持った。とかくネットメディアやマスメディアのあり方が話題になり、議論になるこの頃ではあるが、糸電話というのは今日のあるべき対話のかたちを示唆しているように思った。
糸電話は聞こえにくい。そして、相手が話しているときは聞いていなければならない。自分は相手が話し終わったのを見きわめてから話し始めなければならない。というようにやりとりが不自由なので必然的に文章をまとめて話す必要がある。それは対話する相手のことを考えて、言葉を発するというコミュニケーションの基本である。
コミュニケーションをテーマとする現代アート作家の個展にふさわしい体験をさせてもらった。話してみて、言葉を選びながら話す作家本人も誠実そうな若者だった。これからの活動を期待している。