『トリフィド時代 (食人植物の恐怖)』ジョン・ウィンダム

「トリフィド時代 (食人植物の恐怖)」ジョン・ウィンダム

1950年代のSFで誰もが知っている傑作。ある夜、世界中を覆った流星群を見た人々は視力を失った。同時に可動能力のある食肉植物トリフィドが蔓延し、視力を失った人々を襲い始める。というポスト・アポカリプスとサバイバルのジャンルの魁となる小説。

「トリフィドの日」という映画にもなったが、原作はそちらとは違って生き残った人々(晴眼者も失明者も)がどのようにして文明を継続させていくのか、その苦闘を描くのが主な内容。

ロンドンと英国の田舎を舞台に文明崩壊後の世界が詳細に描かれており、それがこの小説の読みごたえのある部分である。

20世紀初頭の作家は文明の滅亡を描くことが多かった。膨大な死体を描いた「紫の雲」もそのひとつだったが、こちらは盲目となった大多数の人間の生存という問題とトリフィドという脅威にどう対応していくのかが綿密に描かれている。

文明社会が視力を失ってからの混乱は、「白の闇(ジョゼ・サラマーゴ)」にも影響を与えているのではないかと思った。