『タイム・シップ』スティーヴン・バクスター

「タイム・シップ」スティーヴン・バクスター

H.G.ウェルズの古典「タイムマシン」の続編として書かれたもの。19世紀末の現在に帰ってきた主人公が翌日ウィーナのいる未来に還ったところ、そこは改変された未来だったという出だし。

リングワールド的な惑星土木工学、それからスチームパンク的な20世紀の戦争期、さらに太古の世界でサバイバルと人類種の始原。その後、量子論的宇宙観からサイバーパンクを経て宇宙の始まりへ遡る展開と盛りだくさん。

しかし、並べただけで展開に説得力がない。人物にも深みがない。19世紀的西欧の知性がこうした最新SFの素材をどうとらえるのか、もっとじっくりと読みたかった。

ところで後半で取り上げられる自己増殖型人工知性が宇宙に展開していくというアイデアは「時間封鎖(ロバート・チャールズ・ウィルスン)」にもあった。

このアイデアは「タイム・シップ」の方が先だが、「時間封鎖」ではさらに展開した人工知能がより上位の知性にコンタクトし、それに融合していくという展開となる。

そして地球を封鎖したのはこの全宇宙的存在であったという部分はかなりのSF的興奮だった。