映画『ハーヴェイ・ミルク』
米国でホモセクシュアルとして初めて選挙に選ばれて公職を得たハーヴェイ・ミルクのドキュメンタリー。1984年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門受賞作品。
サンフランシスコのゲイムーブメント興隆と、市長が多様性社会に理解があったこともあり、ハーベイはホモセクシュアルの教師を追放するべきとした第6条破棄の住民投票に勝利するなど多くのゲイ運動の成果を勝ち取っていく。
しかし、同じくサンフランシスコ市の議員であったホワイトに市長とともに射殺されその生涯を閉じる。議員としての在任期間はわずか1年であった。
彼の死を受けての市民のキャンドルデモは静かで厳粛な雰囲気であったという。しかし、犯行に及んだホワイトの陪審員判決がわずか7年8ヶ月であったことに怒った市民のデモは暴力的であった。
「殺されたのが市長だけだったらホワイトは死刑になっていたろう。しかし、世の中の多くはゲイが殺されるのは仕方のないことだと思う者が多い」というインタビューが映画にあった。
「中産階級以上の白人は、窓を越えて市庁舎に入り市長を射殺し、予備弾丸を装填して別の議員を射殺しても死刑にならないことがわかった」という発言もあった。
現在、Black Lives Matter運動のきっかけとなった白人警官による黒人への暴力行為を見ることができる。あれから50年近くになるが、アメリカ社会は変わってないのではないか。
ハーヴェイが夢見た世界はまだ遠い、それどころが遠ざかっているのではないかと暗澹たる思いになる。今日見るには重い映画だ。