映画『瀑布』Netflix
パンデミック下で精神を病んで行く母、そしてその娘を描いた映画。この上なく沈鬱だが台湾映画の深みと実力をいかんなく発揮した傑作である。
カメラのほとんどが母娘が暮らす台北の高級マンションの室内。しかもパンデミックでマスク姿が多い。見てて息が詰まる。
それに母は離婚した夫にこだわりを持っており、勤務先の外資系企業からリストラされ、あげくは鬱病を発症。思春期の娘もやっかいな性格。
ということで前半は陰々滅々で途中で観るのを止める人も多いのではないか。
しかし、全編を通じて人生の機微を画面いっぱいに展開してくれるところがこの監督の素晴らしいところ。前作の「ひとつの太陽」でもそうだった。
外壁工事の覆いが取り去られた後の室内の光。同じ部屋を撮ってるのにこの表現。
映画の4大要素、「演技、脚本、カメラ、音声」がこの映画ではどれも素晴らしい。まさに台湾映画の実力をいかんなく発揮している。
同調意識に寄り掛かる日本映画、過剰に振れがちな韓国映画とも違う。深みがあり観るもの感性を信頼するのが台湾映画。この映画ではそれが充分に堪能できる。
また、最後のエピソードがともすれば付け足しのように見えるが、それでも納得感と充足感を持って終わることが出来るのが作品の力。
台湾映画はもっと世界的に評価されてもいいと再認識した。