映画『PLAN 75』
相模原障害者殺傷事件に関する論文を読んで気になった作品。
しかし、こうした淡々とした語り口で、社会的課題のある一面だけを放り出すように描く映画にはうんざりする。「これは(映画製作者ではなく)あなたたちの問題です」という文字がエンドロールに透けて見える。
落ち着いたカメラが往年の名優の演技をとらえた「こんな映画をみている私って意識高い」といい気分にさせるだけの映画である。しかも、そう感じるのは当事者からほど遠い若者や中高年。こうした映画は女性監督、カンヌ受賞作に多いようなのは気のせいだろうか。
まだまだ働く気満々の小綺麗な高齢者が制度的な死を選ぶという非現実性よりも、重度障害者施設で職員が糞便の処理をしているところや、後期高齢者施設で呼吸器・胃ろうの寝たきり利用者群という現実を描くべきだったのではないか。
そもそもまだ一人暮らしができて仕事する気のある高齢者をコストをかけて安楽死させる制度よりも、重度障害者や寝たきり高齢者をターゲットにした制度が真っ先に成立するだろう。
優生保護法や障害者差別問題に先人たちが血みどろになりながら取り組んできた活動があるのだ。それを知らない人が作った「きれいな」だけの映画。ちょっと調べれば安楽死法制化反対運動や尊厳死を巡る議論に関する資料が膨大にあるのだからそれを調べるのがクリエーターとしての第一歩ではないか。