『次の夜明けに』徐嘉澤
台湾の現代文学。台湾の近代史に翻弄される家族の物語を、家族ひとりひとりのモノローグ形式で語る。近代英米文学にあった「意識の流れ」という形式を思い出した。
二二八事件、美麗島事件、美濃ダム建設反対運動、葉永鋕少年事件、七一一水害、高雄地下鉄工事暴動、高雄におけるLGBTパレードなど台湾における大きな歴史的事件を知っておくと理解が深まる。
それにしても本作の淡々とした語り方にあらためて感動を覚える。そして、考えてみれば映画にしても漫画(グラフィックノベル)にしても、台湾メディアのこうした過剰な感情のない表現は通底しているように思える。
徹底した内向である日本とも、すべてにおいて過剰な表現になる韓国とも違ったこうした語り口はどうして作られていったのか。メディア論として興味深いテーマではなかろうか。