『BUTTER』柚木麻子
首都圏連続不審死事件をモデルにした女性の生きづらさと食欲がテーマの小説。雑誌記者が容疑者と面談するうちにその闇に引き込まれるというストーリーで「羊たちの沈黙」を思い出させる。
容疑者がなぜ事件の中心にいたのかという謎が小説のドライバーだと思うのだが、そのためには謎を追求している主人公(記者)の衝動が不可欠だと思う。
しかし、大手出版社の看板雑誌の記者で将来はデスクを嘱望されている独身女性記者が、なぜ容疑者に何度も面会し、その食へのこだわりを追体験することにしたのか。また、親友までもが事件に巻き込まれることになったのか理解できない。私はこの主人公とその周辺の仲間たちに共感できなかった。
「羊たちの沈黙」の場合、現在進行中の殺人事件の突破口を求め凶悪犯罪者と面談する捜査官の行動はすんなりと共感できたが。
私には主人公の周りの仲間(同僚や恋人、部下、親友、母親、業界の理解者)の方がむしろ容疑者の闇よりもとてつもないファンタジーだと思う。これが受け入れられるのならばそれは大人向けの小説ではない。ラノベもどきだと思う(本物のラノベを貶めた意味ではない)。
闇に関わるうちに引き込まれてしまう女性についての小説であれば桐野夏生を読みたいと思った。こちらの女性はいつもひとりである。