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映画『主戦場』

「従軍慰安婦問題に決着をつける」というキャッチコピーながら、やっていることは相変わらずの「両論併記」。しかもこうした映画を見にくる人がよろこびそうな方向に傾斜しつつという映画。 土曜日の夕方の回はほぼ満席。灯りがつくと自然発生的な拍手が湧いたが、それでよけいにがっかりした。見たい映像を見せてくれてありがとうという拍手は、映画の作り手としてうれしいものなのだろうか。 このテーマが両サイドから繰り返し取り上げ...

映画「ニッポン国 VS 泉南石綿村」

大阪府泉南市住民によるアスベスト訴訟の8年間を追ったドキュメンタリー。メイシネマ祭’19で鑑賞。あのホールの3分の1くらい埋まってたからだいたい100人くらい集まっていたか。 しかし3時間半は長い。原告が多いのでひとりひとりにじっくり話を聴くと長くなってしまうのは仕方ないが、それでも最高裁判決まで出た訴訟なのだから「ここがポイント」という編集をしてほしかった。 それにしても驚いたのは原監督自らが原告に対し...

「死民と日常 <私の水俣病闘争>」 渡辺京二

水俣病闘争において運動側の中心人物のひとりである渡辺による評論集。本編の焦眉は「水俣から訴えられたこと」という講演採録。本人によるあの活動の総括という位置付けは1990年の講演である。 ドキュメンタリー映画「水俣ー患者さんとその世界」にある蛸とりのシーンが暗示するように、患者を死病にかかった可哀想な病人としてではなく、まずは水俣の日常を生きる民である。そういう幅で捉えるべき、というのが彼の心...

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「六月の雪」乃南アサ

30代の日本人女性がふとしたことから祖母の生まれ育った台南へ行くことに。言葉はもちろん、台湾の歴史背景も知らない彼女が、現地で知り合った人々と祖母の足跡を探すうちに歴史の現実を知るという小説。 確かに日本の歴史教育では台湾領有、韓国併合、満州国建国などは通り一遍かまったく触れないだろう。しかし、ここまで何も知らないのが実際の30代かと思うとがっかりする。 台湾で美食三昧の観光もいいだろうが、実際に行って人...

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「父の果/未知の月日」吉屋信子

新聞書評で見つけて「いつか読む」としていた本だけど、こういうのにハズレはない。読んでよかった。 吉屋と言えば大正・昭和初期の人気少女小説作家で縁がないかなと思っていたのだけど、大戦期の戦争協力とその後の絶筆期を経て味のある大人の小説を書くようになっていた。 この本はそうした戦後の小説とエッセイによるアンソロジー。 お妾さんとして生きることを選んだ女と本妻の、戦争を経て生まれた友情を描いた「みおつくし...

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「紫の雲」M・P・シール

人類の滅亡後ひとり生き残った男を描いた19世紀の幻想小説。 人類滅亡の理由は古今東西の小説ではいろいろとあるのだが、この小説のように「本来人間が足を踏み入れてはいけない場所、北極点に行ったこと」というのは珍しい。地球がその報いとして紫の雲によって人類を滅ぼすことに決めたという。 科学と信仰がせめぎ合っていた時代が生み出した小説として読めば、生き残った男のその後の行いも味わい深い。 しかし最後には他者...

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「靖国神社」島田裕巳

明治から今日に至る靖国史には目新しいものはなかったが、安部政権が容認した集団的自衛権の行使により自衛隊員の戦死者が出る可能性を指摘したエピローグは興味深い。靖国はこうした新事態に対応できるのか。彼らも変わらざるを得ない。

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映画『わすれな草』

アルツハイマー病の母、そして彼女を支える父の姿を映像作家である息子のカメラがとらえた数年間。これが小説でなく、劇映画でなく、ドキュメンタリー映画になったことをまずは祝福したい。 そしてこれは介護についての映画ではない。「運動」と「活動」の時代を生きた女と男の、その後の長い人生についての映画である。それを終わり近くの数年間をとらえることで描こうとするものである。 このふたりは「自由恋愛」や「...

『引揚げ文学論序説: 新たなポストコロニアルへ』朴裕河

『引揚げ文学論序説: 新たなポストコロニアルへ』朴裕河『引揚げ文学論序説: 新たなポストコロニアルへ』朴裕河 うちの叔母も上海からの引揚げで当時の贅沢な生活の話を聞いたことがある。この引き揚げによって650万人もの兵士と民間人が内地へ還ってきたという。その中には後年活躍する多くの作家がいた。いわく埴谷雄高、湯浅克衛、五味川純平、古山高麗雄などなど。しかし、この引き揚げ体験を中心テーマとした作品が意外と少なく、結果とし...

帝都東京を中国革命で歩く | 譚 璐美 |本 | 通販 | Amazon

帝都東京を中国革命で歩く | 譚 璐美 |本 | 通販 | Amazon「帝都東京を中国革命で歩く」譚璐美歴史を顧みればそもそも交流が深く、相互に尊敬しあっている日中。なのに近年の関係悪化は意図的であると同時に、一般国民の歴史への無知から生じていると思う。本書は明治後期から大正にかけて東京に留学した中国人たちの足跡を、早稲田、本郷、神田などの土地に沿って書いたエッセイである。そこには孫文、魯迅、蒋介石、周恩来などの有...

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映画『残穢【ざんえ】−住んではいけない部屋−』

映画『残穢【ざんえ】−住んではいけない部屋−』 本来ホラーではないのでとってつけたエンディングはムダ。地味な竹内結子と橋本愛ちゃんを鑑賞するための映画。 それにしても炭鉱事故の被害者が炭鉱主を恨んでという因果はよくみかける。 その度に膨大な兵士を南洋やビルマで無駄な死に追いやり、シベリアに送り込んだ旧軍高級参謀がなぜ呪われないのだろう、なぜのうのうとした余生を送ったのだろうと思う。 (Source...

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日本会議の研究 (扶桑社新書) : 菅野 完 : 本 : Amazon

日本会議の研究 (扶桑社新書) : 菅野 完 : 本 : Amazon「日本会議の研究」菅野 完コピーは安倍政権を牛耳る秘密組織のような惹句ながら、実際は書名通り日本会議という団体についての調査研究書である。フリーメーソンやユダヤロビーのように闇から政治経済を操る怪しい組織でもない。70年代や80年代の右派学生運動を出発点として、生長の家を通じて継続・発展した団体が、今日では安倍政権のブレーンになったというだけの話。...

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ボランティアという病 (宝島社新書) : 丸山 千夏 : 本 : Amazon

ボランティアという病 (宝島社新書) : 丸山 千夏 : 本 : Amazon「ボランティアという病」丸山 千夏災害がある度に被災地に群がる評判のよくないボランティア団体のあれこれを追ったルポ。いずれもどこかで耳にした話なのだが、「社団法人つながり」「NPO法人ユナイテッドアース」「ふんばろう東日本」など実名を挙げて批判しているところが珍しい。アマゾンのほしいものリストを利用した詐欺疑惑、阿蘇復興1000人田植えなど...

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失われた兵士たち 戦争文学試論 (文春学藝ライブラリー) | 野呂 邦暢 | 本 | Amazon.co.jp

失われた兵士たち 戦争文学試論 (文春学藝ライブラリー) | 野呂 邦暢 | 本 | Amazon.co.jp「失われた兵士たち 戦争文学試論」野呂 邦暢終戦直後に多くの兵士・軍人たちが出版したものを戦記物という。野呂は一般書籍、自費出版、私家版など500冊あまりを収集し、これをあの戦争への考察の糧とした。「文学の域に高められていないという理由で軽んじられ話題にもならない書物の一群がある」昇華され文学としての純度が高...

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Amazon.co.jp: 放浪記 (新潮文庫): 林 芙美子: 本

Amazon.co.jp: 放浪記 (新潮文庫): 林 芙美子: 本放浪記(林芙美子)新潮社「貧乏な私だけど明るく元気に生きていました」という話ではない。この本から貧しくても明るくけなげに生きていた明治・大正の女性像を読み取る人は、実際の貧困や認められない表現者であるという体験をしたことがないのだろう。当方、失業中の中年アーティストなので、読み続けることが困難なくらい身につまされた。それでも目が離せない。一気に読みき...

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教科書名短篇 – 少年時代 (中公文庫) | 中央公論新社 | 本 | Amazon.co.jp

教科書名短篇 - 少年時代 (中公文庫) | 中央公論新社 | 本 | Amazon.co.jp教科書名短篇 - 少年時代 (中公文庫)中学の教科書にある近代の名作集。あらためて読んでみると、どれも味わい深い。日本の文学が厚みと深みをそなえていることを実証する一冊。こんな本を鑑賞としてよむといいなあ。問題として読むんじゃなくて。思えば、授業では触れなかったこういう文章を、ある時、先生がじっくりと朗読してくれたことがあ...

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日本近代随筆選1 出会いの時 (岩波文庫) | 千葉 俊二, 長谷川 郁夫, 宗像 和重 | 本 | Amazon.co.jp

日本近代随筆選1 出会いの時 (岩波文庫) | 千葉 俊二, 長谷川 郁夫, 宗像 和重 | 本 | Amazon.co.jp「日本近代随筆選―1 出会いの時」(岩波文庫)ごく最近編まれた鴎外、白秋など近代大家たちの随筆集。特に気に入ったのは「奥常念岳の絶峰に立つ記(小島烏水)」明治期の山岳紀行の走りではあるがいつの時代も爽快感がある。柳田国男の「浜の月夜/清光館哀史」はたまたま訪れた旅の宿で出会った夜踊りの記憶とそ...

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原発棄民 フクシマ5年後の真実 : 日野 行介 : 本 : Amazon

原発棄民 フクシマ5年後の真実 : 日野 行介 : 本 : Amazon原発棄民 フクシマ5年後の真実 : 日野 行介先日読んだ「ルポ 母子避難」と同じく福島の自主避難者についてのルポ。あちらはひたすら避難者に寄り添うものだったが、本書は毎日新聞の記者による主に政府と福島県庁など行政の動きを追ったもの。公式資料の読み込みや省庁担当者の待ち伏せインタビューなど、記者ならではの情報が多い点は評価できるが考察がやや物足りな...

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ルポ 母子避難――消されゆく原発事故被害者 (岩波新書) | 吉田 千亜 | 本 | Amazon.co.jp

ルポ 母子避難――消されゆく原発事故被害者 (岩波新書) | 吉田 千亜 | 本 | Amazon.co.jp「ルポ 母子避難――消されゆく原発事故被害者」吉田千亜福島第一原発事故は多くの避難者を生み出したが、中でも避難対象地区を外れても避難することを選んだ、いわゆる「自主避難者」も多い。本書はその自主避難者の家族とその深刻な課題を追った最新のルポである。原発事故の避難者と言っても種類がある。政府が定めた帰宅困難区域...

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CD付 現代語訳でよむ 日本の憲法 : 木村草太, 柴田元幸 : 本 : Amazon

CD付 現代語訳でよむ 日本の憲法 : 木村草太, 柴田元幸 : 本 : Amazon「現代語訳でよむ 日本の憲法」木村草太、柴田元幸日本国憲法は当時としては画期的なことに口語文で書かれたのだが、今となってはそれでも読みにくい。それもあってか現代の日本人は憲法と親しむとはほど遠い状況にある。そこで、現代語訳とか若者語訳とか日本国憲法の読み替えの試みがいろいろあるのだが、本書は根本的に違う。なぜなら原典が正文ではなく、...